火災予防条例とは、消防法の委任に基づき市町村が定める条例で、火を使用する設備・器具の位置や構造、管理の基準、指定数量未満の危険物(少量危険物)や指定可燃物の貯蔵・取扱基準、住宅用防災機器の設置基準など、地域の火災予防に関する規制を定めるものである。
飲食店の厨房設備の離隔距離も、祭りの露店に消火器を置く義務も、住宅の火災警報器も——根拠をたどると国の法律ではなく、そのまちの火災予防条例に行き着く。消防法は、火気使用設備の基準(第9条)、住宅用防災機器(第9条の2)、指定数量未満の危険物と指定可燃物(第9条の4)を市町村条例に委任しており、火災予防条例はこの受け皿である。全国どこでも条文がほぼ同じなのは、消防庁が準則として示す火災予防条例(例)を各市町村が基に制定・改正しているためで、大きな火災の教訓は条例(例)の改正として全国へ展開される。2013年の福知山花火大会の火災を受けて、祭礼や縁日で火気器具を使う露店等の開設届出と消火器の準備が条例(例)に盛り込まれたのはその典型である。消防本部の予防課にとっては立入検査や違反処理の直接の物差しであり、法律より条例を引く頻度の方が高い、予防行政の主戦場といえる。
条例(例)という準則——全国でほぼ同じ条文になる仕組み
火災予防条例は市町村ごとの条例でありながら、内容は全国的にそろっている。消防庁が火災予防条例(例)を通知で示し、市町村がこれを基に自分の条例を制定・改正するためである。法令改正や火災の教訓はまず条例(例)の改正として示され、市町村議会の議決を経て全国の条例に反映されていく。2013年8月の福知山花火大会火災(露店のガソリン携行缶からの引火)の後、対象火気器具等を使用する露店等の開設の届出制と消火器の準備義務が条例(例)に追加され、短期間で全国の祭礼・イベント実務を変えた例は、この仕組みの伝播力をよく示す。準則方式ゆえに、寒冷地のストーブ規制のような地域事情の上乗せも市町村の判断で可能である。
条例が受け持つ範囲——炉から住宅用火災警報器まで
受け持ちは大きく三つある。第一に、炉、ボイラー、給湯設備、厨房設備といった火を使用する設備・器具の位置、構造、管理の基準(消防法第9条の委任)。第二に、住宅用防災機器の設置・維持の基準(第9条の2の委任)で、住宅用火災警報器の設置義務化(新築住宅は2006年6月から、既存住宅は条例で定める日から)はこの枠組みによる。第三に、指定数量未満の危険物(少量危険物)と、わら製品や木材など火災時に拡大が速い指定可燃物の貯蔵・取扱基準(第9条の4の委任)である。いずれも消防本部の立入検査と是正指導の根拠であり、違反対象物の公表制度の対象にも条例違反が含まれる。
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)