一つの現場で実際に手を動かす技能者が、発注者から見て三次・四次といった末端の事業者に雇われていることは建設業では珍しくない。元請が直接すべての工種を抱えず専門工事を下請に出し、その下請がさらに別の専門業者へ出すことで層が積み重なる。層を経るごとに各段階の事業者が経費と利益を抜くため、末端へ届く労務費が削られ、現場で働く技能者の処遇低下につながる。誰が誰を指揮し誰が安全に責任を負うのかも層が深いほど曖昧になり、災害発生時の責任の所在が分散する。建設業法は一括下請負の禁止や下請への適正な代金支払を求め、施工体制台帳の作成によって重層化した請負関係を発注者が把握できるようにしている。
層が深まるほど薄まる労務費と担い手
建設業では元請が専門工事を下請に出し、その下請がさらに別の業者へ出すことで層が重なる。問題は、層を経るごとに各段階の事業者が管理経費と利益を上乗せ(中抜き)するため、発注者が支払った代金のうち末端の技能者の手元に届く労務費が目減りすることである。技能者の賃金が抑えられれば若年層が入職せず、建設業の担い手不足を深刻にする一因となる。国土交通省は技能労働者の処遇改善のため設計労務単価を引き上げ、元請に対し下請への適正な賃金水準の確保を要請してきたが、層が深いほど末端まで行き渡ったかを確かめにくい。重層化そのものは専門分業の合理性に根ざすため一律に禁じられないが、過度な重層は労務費の毀損として政策上の課題とされている。
責任の分散と施工体制台帳による可視化
層が深まると、現場で誰が誰を指揮し、品質と安全に誰が責任を負うのかが見えにくくなる。元請は自社が請け負った工事を一括して他人に請け負わせること(丸投げ)を建設業法第22条で禁じられており(一括下請負の禁止)、名目だけの中間業者が介在して責任主体が曖昧になる事態を防いでいる。さらに公共工事や一定規模以上の民間工事では、元請が施工体制台帳と施工体系図を作成し、下請のすべての事業者と請負関係を記載して発注者に提出する義務を負う。これにより発注者は重層化した請負の連なりを一覧でき、無許可業者の関与や不当な重層を点検できる。施工品質の確保と安全管理は、こうして請負の階層を文書で可視化したうえで、元方事業者による統括安全衛生管理と結びつけて担保される。
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