ジチテン

事故繰越し

読み:じこくりこし

意味

事故繰越しとは、年度内に支出負担行為を済ませた経費が避けがたい事故により年度内に支出を終わらなかった場合に、議会の事前の議決を経ずにその経費を翌年度へ繰り越して使用できる制度であり、地方自治法第220条第3項ただし書を根拠とする会計年度独立の原則の例外の一つである。

事故繰越しは、地方自治法第220条第3項ただし書に基づく予算繰越しの一形態である。年度内に契約等の支出負担行為を終えていながら、天災や相手方の事情といった避けがたい事故によって年度内に支払いが完了しなかった経費を、翌年度に繰り越して支出することを認める。繰越明許費が翌年度にわたる支出の見込みを事前に議会の議決で予定しておく制度であるのに対し、事故繰越しは支出負担行為が済んだ後に生じた不測の事態への事後的な対応であり、繰越しにあたって議会の事前議決を要しない点が大きく異なる。繰り越せるのは当該経費およびその事業の遂行に関連して必要となる経費に限られ、新たな事業への流用は認められない。繰越しを行った場合は繰越計算書を調製し、翌年度の議会へ報告する。実務では、用地買収の遅延や資材不足による工期延長などで年度内完了が難しくなった工事案件で用いられることが多い。

繰越明許費との違い

両者はいずれも会計年度独立の原則の例外として翌年度への繰越しを認める制度だが、繰越しを行う時点と議会関与のあり方が異なる。繰越明許費は、当該年度の予算編成や補正の段階で「翌年度にわたって支出が見込まれる経費」をあらかじめ特定し、議会の議決によって繰越しの枠を設定しておく事前型の制度である。これに対し事故繰越しは、支出負担行為まで済ませて年度内に完了する見込みだった経費が、避けがたい事故によって結果的に未支出となった場合の事後型の制度であり、繰越しにあたり議会の事前議決を要しない。したがって、年度途中で繰越しの必要が判明したものの繰越明許費の議決を得られなかった経費でも、要件を満たせば事故繰越しによって翌年度に使用できる場合がある。

要件と対象経費

事故繰越しが認められるためには、年度内に支出負担行為(契約の締結等)を済ませていること、および年度内に支出を終わらなかった原因が「避けがたい事故」に当たることの二つを満たす必要がある。避けがたい事故とは、天災や相手方の倒産、関係機関との調整の難航など、当該団体の責めに帰すことのできない外的な事由を指す。繰り越して使用できる金額は、当該支出負担行為に係る経費に加え、その工事その他の事業の遂行上必要となる関連経費を含む。一方で、当初の目的を超えて新たな事業へ充てることはできず、繰越しはあくまで未完了の事業を翌年度に完遂するための措置に限られる。

手続と議会への報告

事故繰越しは事前の議決を要しないが、繰越しを行った後に手続上の説明責任が課される。繰越しをした普通地方公共団体の長は、繰越計算書を調製し、翌年度の議会の認定または報告に付すことで、どの経費をいくら繰り越したかを明らかにする。出納整理期間(翌年度の5月31日の出納閉鎖まで)との関係にも注意を要し、出納閉鎖までに支出が完了した経費は繰越しの対象とならない。実務では、年度末に近い時期に事故繰越しの見込みが立った段階で、財政担当課と原課が繰越事由・金額・翌年度の支出見込みを整理し、出納閉鎖後すみやかに繰越計算書を取りまとめる流れが一般的である。

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