自動車臨時運行許可とは、道路運送車両法第34条に基づき、登録を受けていない自動車や車検切れの自動車を、新規登録や検査などの目的に限って一時的に運行させる許可である。許可は地方運輸局長のほか、市・特別区の長および政令で定める町村の長が行う。
ナンバーのない車も車検が切れた車も公道は走れないが、車検を受けるには検査場まで自走させたい——この矛盾を解くのが臨時運行許可であり、貸与される赤い斜線入りの番号標の見た目から、窓口では「仮ナンバー」の通称で定着している。申請先は市区町村(町村は政令で指定されたもの)の窓口で、運行の目的・経路・期間を特定し、自動車損害賠償責任保険の証明書を提示して、許可証と番号標の貸与を受ける。有効期間は5日を超えることができず(同法第35条)、満了後5日以内に番号標と許可証を返納する義務がある。手数料は地方公共団体の手数料の標準に関する政令を踏まえ750円とする団体が大半である。住民や事業者が未登録の車を合法的に動かせる唯一の正規ルートであり、車検切れ車両の回送、廃車の引き渡し、被災車両の移動など出番は意外に広い。
国の制度なのに窓口は市区町村——権限配置の妙
自動車の登録・検査は国土交通省の運輸支局が担う国の事務だが、臨時運行許可だけは道路運送車両法第35条が地方運輸局長と並んで市・特別区の長、政令で定める町村の長を許可権者に挙げており、住民は身近な役所で即日許可を受けられる。窓口では本人確認、自賠責保険証明書の原本確認、運行経路と目的の審査を行ったうえで、番号標と許可証を貸与する。番号標は市区町村の貸与物品であり、亡失すれば弁償の対象になる。頻出するトラブルは返納の遅滞と目的外運行で、車検目的と申請しながら日常の足として使い続ける例が典型である。無許可運行や番号標の不正使用には同法の罰則があり、窓口での目的・経路の確認が単なる形式でない理由はここにある。
仮ナンバーと赤枠ナンバー——回送運行許可との弁別
1回の運行ごとに許可を受ける臨時運行許可に対し、自動車の製造・販売・陸送・整備を業とする者が未登録車を反復継続して回送するための包括的な制度が回送運行許可であり、こちらは地方運輸局長の許可で、番号標は赤い縁取りのいわゆるディーラーナンバーである。市区町村の窓口が扱うのは前者だけで、業者が車両を次々に持ち込んで仮ナンバーを繰り返し申請してくる場合は、本来は回送運行許可で対応すべき態様である可能性が高い。両者は根拠条文も許可権者も異なるため、窓口での案内を誤ると申請者を二度手間にさせる。見分けの起点は「特定の1台を1回動かすのか、業として反復するのか」である。
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