壁面後退とは、建築物の外壁またはこれに代わる柱の面を、敷地境界線や道路境界線から一定距離だけ後退させる規制をいう。用途地域・地区計画・建築協定などで定められ、ゆとりある街並みや延焼防止を図る。
建物が敷地いっぱいに建つと、隣家との間に空間がなくなり、採光・通風・防火・景観のいずれもが損なわれる。壁面後退は、建物の外壁を境界線から一定距離下げさせることで、敷地の周囲に空地を確保し、ゆとりある街並みと安全を生み出す規制である。窓口では用途地域や地区計画の制限としてしばしば問われる。
根拠はいくつもある。第一種・第二種低層住居専用地域では、都市計画で外壁を境界線から1メートルまたは1.5メートル後退させる「外壁の後退距離」を定められる。地区計画や建築協定でも壁面の位置の制限として後退を求められる。さらに高度利用地区や特定街区では、壁面後退とあわせて容積率の割増しを認める運用もある。
壁面後退で生じた空地は、植栽や歩行者空間として街の質を高める。延焼防止の効果もあり、防火の面でも重視される。壁面後退の有無と距離は建築計画の初期段階で確認すべき事項で、見落とすと設計のやり直しにつながる。
低層住居専用地域の外壁後退距離
壁面後退の代表例が、第一種・第二種低層住居専用地域および田園住居地域で定められる外壁の後退距離である。これらの地域では、都市計画で外壁またはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離の最低限度を1メートルまたは1.5メートルと定めることができる(建築基準法第54条)。良好な低層住宅地のゆとりや採光・通風を保つための規制で、定められた地域では境界ぎわまで建てられない。ただし物置など軒高2.3メートル以下かつ床面積5平方メートル以内の部分や、外壁の中心線の長さの合計が3メートル以下の部分には適用しないなどの緩和があり、狭小敷地での増改築や建替えではこの距離と緩和規定の両方が効いてくる。
容積率割増しとの引き換え
壁面後退は、市街地の高度利用と組み合わせて使われることもある。高度利用地区や特定街区、総合設計制度などでは、壁面を後退させて公開空地や歩行者空間を確保することと引き換えに、容積率や斜線制限の緩和(割増し)を認める。これは、敷地内に公共的な空地を生み出す代わりに建物のボリュームを増やせる仕組みで、密集市街地での再開発を促す誘導手法となっている。壁面後退が単なる制限ではなく、緩和の条件として機能する場面である。
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