ストライキを呼びかけた組合幹部を処罰してよいのか。それは憲法が保障する労働基本権とどう折り合うのか。農林省(当時)の職員でつくる全農林労働組合の幹部が、警察官職務執行法の改正に反対する運動の一環として職員に勤務時間内の職場大会への参加をあおり、争議行為のあおり行為を禁じた国家公務員法に違反したとして起訴された。下級審には処罰に慎重な判断もあったが、最高裁は1973年に大法廷でこれを退け、争議行為の禁止を合憲と判断した。公務員にも労働基本権はあるはずだという問いに、最高裁はどう答えたのか。その論理の組み立てが本判決の核心である。
争議行為の禁止をめぐる争点
争点は、公務員の争議行為とそのあおり行為を一律に禁止し刑罰を科すことが、労働基本権を保障する憲法二十八条に反しないかであった。最高裁は1973年4月25日の大法廷判決で、公務員の地位の特殊性と職務の公共性、勤務条件が法律と予算で定まること、人事院勧告という代償措置が用意されていることなどを理由に、争議行為の禁止を合憲と判断した。とりわけ、争議権の制限を正当化するには労働基本権の制約に見合う代償措置が確保されていなければならないとする代償措置論を前面に出した点が特徴である。
労働基本権の制限と代償措置
この判決は、それ以前に争議行為の限定的な処罰を説いた都教組事件などの判断を実質的に変更し、公務員の労働基本権制限を広く是認する方向へ判例を転換させた。判決では結論こそ大差で一致したものの、判例変更の当否をめぐって裁判官の意見は鋭く分かれ、僅差で多数意見が形成された経緯がある。以後の公務員労働法制は、争議権を認めない代わりに人事院勧告制度を中核とする代償措置で均衡を図るという枠組みを前提として運用されてきた。職員団体の活動範囲や勤務条件決定の仕組みを理解するうえで基礎となる事件である。
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