労働基本権(労働三権)とは、憲法第28条が勤労者に保障する団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)の総称である。地方公務員は全体の奉仕者であることなどを理由にこれらが大きく制約され、職種によって認められる権利の範囲が異なる。
民間の労働者なら当然に行えるストライキや労働協約の締結が、なぜ公務員には認められないのか。労働基本権という枠組みを押さえると、職員の勤務条件をめぐる制度の多くがこの権利の制約と代償から組み立てられていることが見えてくる。憲法第28条は団結権・団体交渉権・団体行動権を勤労者に保障するが、地方公務員にはこれらが職種に応じて段階的に制約される。一般行政職員は職員団体を結成して交渉できるが労働協約の締結権はなく争議行為は禁止され、警察・消防職員は団結権すら認められない一方、企業職員・単純労務職員は労働協約締結権まで認められる。この制約を正当化するための仕組みが、人事委員会勧告に代表される代償措置であり、争議行為の禁止・職員団体・情勢適応の原則といった用語は、いずれもこの労働基本権の制約構造を起点に理解される。
職種による制約の三段階
地方公務員の労働基本権は、職種によって認められる範囲が三段階に分かれる。第一に、警察職員と消防職員は団結権・団体交渉権・団体行動権のいずれも認められない(地方公務員法第52条第5項)。第二に、一般の行政職員は職員団体を結成して当局と交渉する権利を持つが、労働協約を締結する権利はなく(書面協定にとどまる)、争議行為は禁止される(第37条)。第三に、地方公営企業の企業職員や単純労務職員は地方公営企業等の労働関係に関する法律が適用され、団結権と労働協約締結権まで認められるが、争議行為は禁止される。同じ「地方公務員」でも依拠する法律と権利の範囲が異なるため、勤務条件をめぐる手続を検討する際にはまず職種の区分を確認する必要がある。
制約と代償措置の関係
公務員の労働基本権制約が合憲とされる根拠の中心は、制約に見合う代償措置が用意されている点にある。代償措置の代表が人事委員会(人事委員会を置かない団体では長)による給与勧告で、民間給与実態調査に基づき職員給与を社会水準に合わせるよう勧告する。これを支える理論が情勢適応の原則(第14条)であり、労働基本権という市場的調整手段を奪った代わりに、当局へ勤務条件を社会情勢へ適応させる責務を課す。したがって代償措置が形骸化すれば制約の正当化が揺らぐという緊張関係にあり、勧告の完全実施をめぐる議論はこの文脈で読まれる。
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