人事院勧告とは、人事院が国家公務員の給与その他の勤務条件について、民間企業の実態調査に基づき国会と内閣に対して改定を求める勧告をいう。
国家公務員の給与は誰がどう決めるのか。労働基本権が制約される代償措置として、第三者機関である人事院が民間給与の水準と比較し、毎年その較差を埋めるよう勧告するのが人事院勧告である。人事院は毎春の民間給与実態調査(職種別民間給与実態調査)で同一規模の事業所の支給状況を把握し、官民の月例給とボーナス(特別給)の較差を算定したうえで、例年8月ごろに国会と内閣へ勧告する。勧告は法的拘束力を持たないが、内閣はこれを尊重して給与改定の法律案を国会に提出するのが慣例である。地方公務員には人事委員会勧告という同種の仕組みがあり、各団体が人事院勧告の内容を参照して給与条例の改定に反映させるため、地方の給与水準にも波及する。
労働基本権制約の代償措置
公務員は争議行為が禁止され、団体交渉による労働協約の締結権も制約される。この制約に見合う代償措置として、第三者機関である人事院が職員の利益を保護するために置かれ、その中心的機能が給与勧告である。判例上も、人事院勧告制度が機能していることが争議行為禁止の合憲性を支える根拠の一つとされてきた。したがって勧告の実施を見送る(凍結・値切る)ことは、単なる財政判断ではなく代償措置の根幹に触れる問題として扱われる。過去には財政事情を理由に勧告どおりの実施が見送られた例があり、その都度、代償措置の実効性をめぐる議論を呼んできた。
勧告の対象と地方への波及
勧告の対象は月例給とボーナスに相当する特別給(期末手当・勤勉手当)が中心で、官民較差が一定水準を超える場合に改定を求める。較差がわずかな年は据置きとなることもある。地方公務員については各都道府県・指定都市の人事委員会が独自に調査して人事委員会勧告を出すが、調査手法は人事院に準じ、結果も人事院勧告と整合する内容になることが多い。人事委員会を置かない市町村は、これらの勧告を参照して給与条例を改正する。給与は条例で定めるという給与条例主義の下、勧告はあくまで改定の出発点であり、実際の改定は議会の議決を経て確定する。
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)