消防救急デジタル無線とは、消防本部が消防活動・救急業務に用いる260MHz帯のデジタル方式の業務用無線であり、従来の150MHz帯アナログ方式の消防救急無線を全国的に置き換えたものである。
火災現場の部隊と指令室、救急車と病院をつなぐ無線は、2016年5月31日を境に全国で一斉に切り替わった。電波の有効利用のための周波数再編により150MHz帯アナログ波の使用期限がこの日と定められ、全国の消防本部は260MHz帯のデジタル方式へ移行した。デジタル化の利点は、チャンネルの増加とデータ伝送に加えて、秘匿性が高く傍受されにくいことにある。救急業務では傷病者の氏名や容体を無線でやり取りするため、市販の受信機で聞けてしまうアナログ方式は個人情報保護の面で限界が指摘されていた。一方で整備費は高額で、単独整備が難しい消防本部のために都道府県単位やブロック単位の共同整備が広く採られ、設備更新費の確保はデジタル化後も続く課題である。山間部の不感地帯を埋める中継局の維持も含め、消防の通信基盤は「整備して終わり」ではなく更新サイクルを回し続ける事業として消防本部の予算に載り続ける。
なぜデジタル化したか——期限・秘匿性・データ
移行の直接の契機は、電波の有効利用を図る国の周波数再編で150MHz帯アナログ方式の使用期限が2016年5月31日とされたことである。これに合わせて全国の消防本部が260MHz帯デジタル方式の無線設備を整備した。デジタル化で得られたのは、第一に秘匿性である。アナログ時代の消防救急無線は市販受信機で傍受でき、救急搬送中の個人情報が事実上公開状態にあったが、デジタル化で一般の傍受は困難になった。第二に多チャンネル化とデータ伝送で、車両の動態管理や文字情報の送受が音声と並行してできるようになった。整備単位は消防本部だが、費用負担を抑えるため都道府県内の本部が設備を共同整備・共同運用する方式が広がり、県域で基地局網を共有する例もある。応援部隊が他本部の管内で活動する緊急消防援助隊の運用では本部をまたぐ交信が必要になるため、全国共通の運用波が確保されている。
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