LPWA(Low Power Wide Area、LPWAN)とは、通信速度を抑える代わりに省電力性と数キロメートルから数十キロメートルの広域通信を実現する無線通信方式の総称である。電池駆動で数年以上稼働するIoT機器の通信を想定しており、LoRaWANやSigfoxのように免許不要の周波数帯を使う方式と、NB-IoTやLTE-Mのように携帯電話網を使うセルラー系に大別される。
河川の水位計や道路の冠水センサーを市内に数十台置こうとすると、機器代より先に通信と電源の壁に突き当たる。携帯電話回線を1台ずつ契約すれば月額料金が台数分積み上がり、商用電源を引き込めば設置費が跳ね上がるからである。LPWAはこの壁を「送るデータを小さく、まれにする」割り切りで崩した通信方式で、乾電池で数年間動き、1つの基地局で数キロメートル先まで届く。水位の数値や機器の位置のような数十バイトのデータを1日数回送る用途なら、高速な通信は要らない。
国土交通省が普及を主導した危機管理型水位計(洪水時の観測に特化して1台100万円以下・無給電で5年以上稼働)の通信や、水道スマートメーターの自動検針、子どもの見守り端末は、いずれもLPWAが支えている。自治体がIoTを導入するときの実質的な分岐は通信方式の選択であり、自前で基地局を置く自営網(LoRaWAN)を張るか、事業者の全国網(Sigfox、NB-IoT、LTE-M)を借りるかで、初期費用とランニングコストの構造が逆になる。
免許不要帯かセルラーか——4方式の選び分け
LPWAは、免許不要の920MHz帯を使うアンライセンス系と、携帯電話事業者の免許帯域を使うセルラー系に分かれる。アンライセンス系の代表がLoRaWAN(オープン規格で自営網を構築できる)とSigfox(京セラコミュニケーションシステムが全国網を単独運用する)で、ソニー発のELTRESなども同じ系統に属する。セルラー系はNB-IoT(固定設置・極小データ向き)とLTE-M(最大約1Mbpsでハンドオーバーに対応し移動体に使える)の2規格が3GPPで標準化されている。選び分けの軸は、設置場所が事業者のサービスエリアに入っているか、対象が移動するか固定か、データの量と頻度はどれほどか、そして基地局を自前で維持する体制があるかである。自営網は月々の通信料がかからない代わりに基地局の設置と保守を自治体側が負い、事業者網はその逆の構造になる。
自治体IoTの通信インフラとして——水位計・検針・見守り
自治体の導入例は防災と検針に厚い。国土交通省が開発を主導した危機管理型水位計は、洪水時のみの観測に割り切ることで1台100万円以下・無給電5年以上を実現し、中小河川への大量設置を可能にしたが、その通信を担う製品の通信方式としてLPWAが使われている。東京都水道局は水道スマートメータ先行実装プロジェクト(令和4〜6年度)で約13万個のスマートメーターを設置し、通信にはセルラー系LPWAのLTE-MとNB-IoTを採用した。富山市は市内の小中学校など98の公共施設にアンテナを置くLoRaWANの自営網を整備し、市の人口の98.9%が居住する区域をカバーして、児童の見守りや公共施設の利用状況把握に使っている。電池やセンサーの交換計画、集まるデータを使う所管課の体制まで含めて通信方式を選ぶことが、設置だけで終わらせない条件になる。
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