Sigfoxとは、フランスのSigfox社が開発したLPWA通信方式で、1か国1事業者が全国網を運用するビジネスモデルを特徴とする。日本では京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が2017年2月にサービスを開始し、全国規模のネットワークを単独で提供している。
上り1回12バイト・1日140回まで——Sigfoxは、送れるデータをここまで切り詰めることで端末価格と通信料を抑え、電池寿命を延ばしたLPWAである。検針値や水位、ドアの開閉のような「小さな数値をたまに送る」用途に的を絞り、数年単位の電池駆動を低コストで実現した。免許不要の920MHz帯を使う点はLoRaWANと同じだが、世界的に1か国1事業者だけが網を運用する方式のため、利用者が自前の基地局を立てる自営網は組めない。日本の事業者はKCCSで、人口カバー率は2019年に94%まで拡大した。
方式選定で押さえておきたいのは事業継続の経緯である。開発元の仏Sigfox社は2022年1月に経営難から再建手続きに入り、シンガポールのUnaBiz社が事業を取得した。KCCSは国内サービスの継続を表明したが、海外本体の経営が国内利用者を動揺させたこの出来事は、IoTの通信方式を選ぶ際に技術仕様だけでなく「その網が10年後もあるか」を見る必要を示した。センサーは一度埋設すると簡単には掘り返せない。
12バイトの設計思想——何を捨てて何を得たか
Sigfoxの上り通信は最大毎秒100ビット、1メッセージのデータ部は12バイト、送信回数は1日140回までに制限され、下り(網から端末へ)はさらに限定的である。この極端な割り切りにより通信モジュールが安価になり、送信時間が短いので電池が長持ちし、基地局側の設備も単純になる。12バイトには水位や温度の数値、GPS座標、機器の状態フラグ程度なら収まるため、ガスメーターの検針(日本瓦斯が大規模採用)、河川やため池の水位監視、宅配ボックスや見守りの通知のような用途で採用された。一方、再送制御や暗号化の高度化は端末側の作り込みに委ねられ、ファームウェアの遠隔更新も事実上できないため、設置後に機器側の仕様を直したい場面には弱い。要件が12バイトに収まるかどうかが、この方式を選ぶ最初の試金石になる。
1国1事業者モデルと事業継続リスク
Sigfoxは国ごとに1つの事業者が排他的に網を運用する方式をとり、日本ではKCCSが2017年2月に提供を始めて2019年には人口カバー率94%まで網を広げた。利用者は基地局を持たずに全国エリアをすぐ使える反面、料金もサービス内容も単一事業者の判断に依存する。2022年1月、開発元の仏Sigfox社が経営難で再建手続きに入り、シンガポールのUnaBiz社が同年に事業を取得した。KCCSは日本国内のネットワーク運営を継続し、クラウド基盤の国内移管を含めてサービスを続ける姿勢を示した。設置済みの端末が数年単位で稼働するIoTでは、通信方式の選定がそのまま長期の事業者選定になる。複数事業者が競うセルラー系や、規格がオープンで網を自営できるLoRaWANとの構造的な違いとして、調達時に比較しておきたい点である。
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