ため池とは、降雨が少なく河川からの取水が難しい地域で、農業用水を確保するために水をためる人工の池をいう。
雨の少ない地域や大きな河川のない地域で、田畑にどう水を引くか――その答えとして古くから築かれてきたのがため池である。降雨や流入水をためて農業用水として使う人工の池で、西日本の瀬戸内地域などに多く分布し、全国に約15万か所が存在する。多くは江戸時代以前に築造された古いもので、管理は土地改良区や水利組合、地元の農家が担ってきた。近年は農業者の減少で管理が行き届かず、豪雨や地震による決壊が下流の人家へ被害を及ぼす危険が顕在化した。2018年の西日本豪雨で多数のため池が決壊したことを受け、決壊時に被害を及ぼすおそれのあるものを防災重点農業用ため池として指定し、優先的に対策を進める枠組みが整えられた。
防災対策の制度化
2018年の西日本豪雨で各地のため池が決壊し人的被害が生じたことを契機に、2019年に農業用ため池の管理及び保全に関する法律が施行され、所有者・管理者に都道府県への届出が義務づけられた。さらに2020年には農業用ため池の防災工事等の推進に関する特別措置法(ため池工事特措法)が制定され、決壊時に下流の住宅・公共施設へ被害を及ぼすおそれがあるものを都道府県が防災重点農業用ため池に指定し、ハザードマップ作成や補強・改修などの防災工事を計画的に進める仕組みが設けられた。指定されたため池は全国で約5万か所にのぼる。
老朽化と管理放棄の課題
ため池の多くは江戸時代以前に築造された古いもので、堤体の劣化や漏水が進んでいる。一方で受益農地の減少や農業者の高齢化により、堤体の草刈り・補修や水位調整といった日常管理の担い手が失われつつある。管理されなくなったため池は決壊リスクが高まるため、危険な池の統廃合や、農地としての利用をやめた池の廃止(埋め立てや低水位化)も対策の選択肢となる。農業用としての役割に加え、洪水時に雨水を一時的にためる治水機能や、ため池を生息地とする動植物の保全といった多面的な価値も評価されている。
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