給与条例主義とは、地方公務員の給与は住民の代表である議会の議決を経た条例によって定めなければならないとする、給与決定の原則の一つである。地方公務員法第24条第5項及び第25条第1項に基づき、条例に基づかない給与その他の給付の支給を禁じる。
給与は職員の生活を支える最も切実な勤務条件であると同時に、住民の税金を原資とする支出でもある。給与条例主義は、その額や支給方法を任命権者の裁量や内部の取り決めに委ねず、住民代表である議会が条例という形で統制する仕組みとして置かれている。お手盛りの給与決定を防ぎ、財政民主主義を人件費の面から担保する原則といえる。
具体的には、給料表や各種手当の額、支給の条件はすべて給与条例に根拠を持たねばならず、条例の定めがなければいかなる金銭も職員に支給できない(地方公務員法第25条第1項)。実務では、人事委員会の給与勧告や国・他団体との均衡を踏まえて給与改定の議案を編成し、議会の議決を経て条例を改正するという手順を毎年度繰り返すことになる。
職務給の原則・均衡の原則と並ぶ給与決定の三原則の一つに数えられるが、前二者が「給与をいくらにするか」という中身の基準であるのに対し、給与条例主義は「誰がどの形式で決めるか」という決定手続の原則である点で性格が異なる。
議会による統制という意味
給与条例主義の核心は、給与の決定権を執行機関の内部に閉じさせず、住民代表である議会の手に置く点にある。給与は人件費として地方財政の大きな部分を占めるため、その水準を任命権者や職員団体の交渉だけで決められるとすれば、住民の負担に対する民主的な歯止めが効かない。条例という形式を必須とすることで、給与改定は議会の審議と議決という公開の手続を経ることになり、いわゆるお手盛りを防ぐ。これは国家公務員の給与法定主義に対応する地方版であり、財政民主主義を人件費の側面から具体化したものといえる。
条例に基づかない支給の禁止
地方公務員法第25条第1項は、職員の給与は給与に関する条例に基づいて支給されなければならず、条例に基づかなければいかなる金銭又は有価物も支給してはならないと定める。これにより、条例に根拠のない手当の新設や、要綱・内規だけを根拠とした給付は許されない。実務では、給料表に定めのない調整的な給与(いわゆる「わたり」など、職務の級と実際の格付けが対応しない運用)が条例主義に反するとして是正の対象になることがある。条例の根拠を欠く支給は違法な公金支出として、住民監査請求や住民訴訟で問われうる。
給与改定の年間サイクル
給与条例主義のもとでは、給与水準の見直しは条例改正という形をとる。人事委員会を置く団体では、毎年、民間給与との較差を調査した人事委員会の給与勧告が出され、これと国・他団体との均衡を踏まえて給与改定の方針が固められる。任命権者が改定案を給与条例の改正議案として議会に提出し、議決を経てはじめて新しい給料表や手当が効力を持つ。人事委員会を置かない小規模団体でも、国の人事院勧告や近隣団体の動向を参考に同様の手順を踏む。給与改定がしばしば年度途中の議会で遡及して適用されるのは、この勧告から議決までの過程に時間を要するためである。
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