いじめ重大事態とは、いじめ防止対策推進法第28条に基づき、いじめにより児童生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがあるとき、または相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあるときに認定される事態である。認定されると、学校の設置者または学校は組織を設けて事実関係を明確にする調査を行わなければならない。
いじめへの対応が「学校限りの指導」では済まなくなる分水嶺はどこか。法第28条は、生命・心身・財産への重大な被害の疑い(生命心身財産重大事態)と、相当の期間の欠席の疑い(不登校重大事態。欠席はおおむね年間30日が目安)の二つの類型を定め、いずれかの疑いが生じた段階で調査義務を発動させる。被害の確証がなくても、児童生徒や保護者から重大事態に至ったという申立てがあれば、重大事態が発生したものとして報告・調査に当たることが国のガイドラインで求められており、学校側の判断で入口を狭めることは許されない。公立学校では発生を教育委員会経由で地方公共団体の長へ報告し、調査結果も長へ報告する。長は必要と認めるときは附属機関を設けて再調査を行い、その結果を議会に報告する(第30条)。調査組織の人選では、弁護士や心理の専門家など利害関係のない第三者を加えて公平性・中立性を確保することが焦点となり、被害児童生徒・保護者への経過説明のあり方も問われる。文部科学省の調査では重大事態の件数は増加を続け、2023年度には1,300件を超えて過去最多となった。
二つの類型と「疑い」段階での発動
いじめ防止対策推進法第28条第1項は、重大事態を二つ定める。第1号は、いじめにより児童生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき(生命心身財産重大事態)で、自殺企図、重い傷害、金品の重大な被害、精神疾患の発症などが当たる。第2号は、いじめにより相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき(不登校重大事態)で、欠席は年間30日が目安とされるが、連続した欠席の場合は期間にかかわらず判断する。いずれも「被害が生じた」ことの確定ではなく「疑い」の段階で調査義務が生じる点が制度の核心であり、2024年に改訂された「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」も、児童生徒・保護者からの申立てがあったときは重大事態が発生したものとして対応することを明確にしている。
調査主体の選択と首長による再調査
調査の主体は学校の設置者または学校であり、どちらが行うかは設置者が判断する。学校主体の調査では既存のいじめ防止の組織に第三者を加える形が、設置者主体の調査では教育委員会の附属機関(いわゆる第三者委員会)を設ける形がとられる。公立学校の場合、重大事態の発生は教育委員会を経由して地方公共団体の長へ報告され、調査結果も長へ報告される。長は、調査の結果について必要があると認めるときは附属機関を設けて再調査を行うことができ、再調査を行ったときはその結果を議会に報告しなければならない(第30条)。教育行政の独立性を保ちつつ、被害者側が教育委員会の調査に納得できない場合の検証経路を首長側に確保した仕組みであり、調査委員の人選の公平性・中立性と並んで、被害児童生徒・保護者への調査方針や経過の説明が運用上の焦点になる。
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