いじめとは、児童等に対して一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的・物理的な影響を与える行為であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう(いじめ防止対策推進法第2条)。
ある児童の言動を「いじめ」と認定すべきか否かは、学校現場が初動で必ず直面する判断であり、ここで法律上の定義を取り違えると組織的対応そのものが動き出さない。いじめ防止対策推進法第2条は、いじめを「行為者の意図」や「行為の継続性・集団性」ではなく、もっぱら受け手の児童が心身の苦痛を感じているか否かで広く定義する。これにより、一回限りの行為やインターネット上の書き込み、本人にいじめの自覚がない言動も定義に含まれ、教職員は主観で軽重を選別せず、まず認知して記録する必要がある。受け手起点の広い定義は認知件数を押し上げるが、これは事態の悪化ではなく早期発見の網が機能している徴表として読む運用が文部科学省により示されている。被害が深刻化し、生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑いや、相当の期間欠席を余儀なくされた疑いがある場合は「重大事態」として、設置者または学校が組織を設けて事実関係を調査する義務が生じる。
受け手起点の定義がもたらす運用上の含意
いじめ防止対策推進法第2条の定義は、行為者側の意図・悪意や、行為の反復性・力の不均衡を要件にしていない点に特徴がある。「一定の人的関係にある他の児童等」が行い、対象児童が「心身の苦痛を感じている」行為であれば、原則としていじめに該当する。この結果、本人がふざけ・遊びと認識していた行為や、SNS・グループチャット上の書き込みも定義に取り込まれる。教職員の側で「これはいじめではない」と入口で選別することは法の予定するところではなく、まず認知し、いじめ防止基本方針に沿って組織的に対応・記録することが起点となる。文部科学省の調査では認知件数が年々増加しているが、これは積極的な認知の表れと位置づけられ、件数の多寡だけで学校の対応の優劣を測らない運用がとられている。
重大事態と調査義務
第28条は、いじめにより児童等の生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑い(生命心身財産重大事態)、またはいじめにより相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑い(不登校重大事態)がある場合を「重大事態」と定め、学校の設置者または学校に対し、組織を設けて質問票その他の方法により事実関係を明確にする調査を義務付ける。被害児童・保護者には調査によって得た情報を適切に提供し、調査結果は地方公共団体の長等へ報告される。公立学校の場合は教育委員会から首長へ報告され、首長が必要と認めれば附属機関による再調査を行う。重大事態の判断は被害の重大性が確定する前の「疑い」の段階で行うものとされ、認定を先送りしない運用が要請される。
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