隣保館とは、社会福祉法に定める隣保事業を行う施設で、地域住民の生活上の相談、交流、人権課題の解決のための啓発の拠点として市町村等が設置するコミュニティセンターをいう。
生活の困りごとへの相談対応と人権課題への取組を、地域の中の一つの施設であわせて担う拠点が隣保館である。社会福祉法第2条第3項は、隣保館等の施設を設けて住民の生活の改善向上を図る隣保事業を第二種社会福祉事業と定めており、隣保館はその実施施設にあたる。沿革としては、明治期以来のセツルメント活動に源流を持ち、戦後は同和対策事業の一環として同和地区とその周辺に整備が進んだ。2002年に特別対策の法律が期限を迎えた後は、国の隣保館設置運営要綱に基づく一般対策の施設として位置づけられ、地域社会全体の中で福祉の向上と人権啓発のための住民交流の拠点となる開かれたコミュニティセンターと定義されている。事業の中身は、日常生活上の相談、人権課題の解決のための啓発・広報、教養文化講座や交流行事の開催、周辺地域を含めた地域福祉活動の支援であり、運営費には国と都道府県の補助制度がある。設置主体は市町村が中心で、人権施策と地域福祉の双方の文脈で運営方針が組み立てられる。
特別対策終了後の位置づけの再構築
隣保館の運営で押さえるべきは、2002年3月の地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の失効を境に、施設の性格づけが変わったことである。それ以前の隣保館は同和対策の特別法体系に基づく事業として整備・運営されてきたが、失効後は社会福祉法上の隣保事業という一般法の枠組みに立ち、対象を特定の地区住民に限定しない開かれた施設として運営することが要綱上も明確化された。実際の事業も、生活相談や人権啓発に加え、高齢者サロン、子どもの学習支援、多文化共生の交流事業のように地域福祉の汎用拠点としての性格を強めている。一方で、人権課題の解決という設置の原点は要綱に残っており、隣保館を単なる貸館施設と扱うのでも、過去の経緯だけで語るのでもなく、相談機能と啓発機能を実態として維持できているかが運営評価の軸になる。
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