行政が国民に対し「これをせよ」「これを納めよ」「これを我慢せよ」と義務を課す行為を、行政法の理論上は下命という。租税の賦課や違反建築物の除却命令のように、相手に新たな義務を生じさせる点に特徴があり、人が本来もつ自由を行政が制約する場面で用いられる。
下命は、行政庁の意思表示に従って法律効果が生じる法律行為的行政行為の一つで、そのなかでも命令的行為に分類される。命令的行為は、国民に義務を課しまたは義務を解除するもので、下命のほか、不作為を命じる禁止、義務を解く免除などがこれに含まれる。これに対し、本来の禁止を解除する許可や、新たな権利を設定する特許などとは、義務を課すか自由・権利を回復・設定するかという点で区別される。自治体の現場では、税の賦課決定や是正命令など処分の理論的な位置づけを理解するうえで、この分類が手がかりになる。
命令的行為としての下命の位置づけ
下命は、行政行為のうち、行政庁の意思表示を要素とし、その意思の内容に従って法律効果が生じる法律行為的行政行為に属する。法律行為的行政行為は、国民に義務を課したり義務を解いたりする命令的行為と、国民に新たな権利や法律上の地位を与える形成的行為に分かれ、下命は前者の命令的行為の代表である。命令的行為には、一定の作為・給付・受忍を命じる下命のほか、一定の不作為を命じる禁止、課されている義務を解除する免除がある。下命によって課される義務には、租税の納付のような給付の義務、違反建築物の除却のような作為の義務、立入検査を受け入れるような受忍の義務などがあり、いずれも相手方に新たな負担を生じさせる点で共通する。
許可・特許など他の行政行為との区別
下命を理解するうえでは、許可や特許など他の類型との違いを押さえることが手がかりになる。許可は、法令が一般的に禁じている行為について、特定の場合に禁止を解除して適法に行えるようにする行為であり、本来各人がもつ自由を回復させる。特許は、特定の者に新たな権利や法律上の地位を設定する形成的行為である。これらが自由の回復や権利の設定にかかわるのに対し、下命は相手に新たな義務を課す点で対照的である。実定法の上では、こうした理論上の分類とは別に、いずれも処分や行政処分という形で行われ、不利益な義務を課す下命は、相手の権利を制約するため、根拠となる法令や手続の適正が問われる。自治体の現場では、税の賦課や各種の是正命令など具体的な処分が、この分類のどこに当たるかを意識することで、その性質や手続上の留意点を整理できる。
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