是正の要求とは、自治事務の処理が法令の規定に違反しまたは著しく適正を欠くとき、国の主務大臣が都道府県・市区町村に対し是正を求める制度のことである(地方自治法第245条の5)。
地方自治の本旨のもとでは、自治事務は地方公共団体が自らの判断と責任で処理するのが建前であり、国の関与は最小限に抑えられる。とはいえ、その処理が法令に違反したり著しく適正を欠いたりする場合まで放置はできない。是正の要求は、こうした場面で国の主務大臣が都道府県・市区町村に対し、違法・不当な状態を改めるよう求める関与の手段である。
是正の要求は、自治事務に対して国が行使できる関与のなかで最も強い類型に当たる。法定受託事務を対象とする是正の指示と対をなし、対象とする事務の種類が異なる点が要点である。主務大臣は都道府県に対して、都道府県知事は市区町村に対して要求を行い、要求を受けた団体はその内容に沿って措置を講じる義務を負う。ただし直接の強制執行力はなく、要求に不服があれば国地方係争処理委員会に審査を申し出ることができる。
是正の指示との関係
是正の要求(自治事務向け)と是正の指示(法定受託事務向け)は対をなす制度だが、国の関与の拘束力の強さが異なる。自治事務は地方公共団体が自己の判断と責任で処理する事務であり、国の関与は最小限に抑えるのが建前であることから、是正の要求は「違法・著しく適正を欠く場合」に限って認められ、しかも具体的な是正措置の中身までは国が指定しない。これに対し法定受託事務への是正の指示は、より直接的に措置の内容まで指示できる。是正の要求は、地方自治の本旨と国による法令適合性の確保とをどう調和させるかという、制度設計上の妥協点に位置している。
実際の発動事例
是正の要求が公式に発動された事例は多くなく、生活保護の申請却下をめぐる問題や保育所の認可基準の運用などで議論の対象となった程度にとどまる。実務上は、是正の要求に至る前段階の技術的な助言・勧告によって大半の問題が解消されるため、是正の要求は最終手段的な位置づけにある。発動件数が少ないこと自体が、国と地方の関係が原則として対等・協力的に運営されていることの表れともいえる一方、いざ国と地方が正面から対立した際の解決手続として、国地方係争処理委員会への審査の申出と一体で機能する点に制度上の意味がある。
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