臨時災害放送局とは、暴風、豪雨、地震などの災害が発生した場合に、その被害を軽減するために役立つことを目的として、臨時かつ一時の目的で開設されるFM放送局である。被災した地方公共団体が免許人となって開設する。
停電でテレビは消え、携帯電話は基地局ごと止まる——そのとき避難所で最後まで使える受信機が乾電池式のラジオである。臨時災害放送局は、被災自治体自身が免許人となって災害情報を住民へ直接放送するための制度で、阪神・淡路大震災を機に1995年に制度化された。給水や炊き出しの場所、罹災証明の受付、ライフラインの復旧見込みのような行政情報を、被災者の手元へ電波で届け続けられる。災害時には電話など口頭での免許申請が認められる臨機の措置がとられ、発災当日からの開局も可能である。運営は既存のコミュニティFM局やNPO、地元の放送経験者に委ねられることが多く、東日本大震災や熊本地震では避難生活の長期化に寄り添う放送が続けられた。復旧の進展とともにいつ閉局するかの判断も、免許人である自治体に委ねられる。
電話一本で開局する——免許の臨機の措置
放送局の免許には通常、申請書類の審査を経る時間がかかるが、臨時災害放送局には災害時の特例があり、総合通信局への電話など口頭による免許申請が認められている。東日本大震災(2011年)では発災直後からこの臨機の措置で被災市町村の局が相次いで立ち上がり、周波数の指定から開局までが数日単位で進んだ。送信設備は総合通信局や関係団体が貸し出す例もあるため、設備を持たない自治体でも開局自体の障壁は高くない。むしろ実際の壁は放送を埋める人員と情報収集の体制であり、庁内の災害対応で手一杯の職員に代わって誰がマイクの前に座るかを、コミュニティFM局との協定や訓練で事前に決めてあるかどうかが、開局後の継続を左右する。
いつ閉じるか——「臨時かつ一時」の出口
臨時災害放送局は恒久免許ではなく、災害の被害軽減という目的が薄れれば閉局が前提になる。だが避難生活が長引く大規模災害では「もう要らない」と言い切れる時点が訪れにくく、東日本大震災の被災地では数年単位で放送を続けた局もあった。聴取が生活の一部になった住民への周知、コミュニティFMへの移行による存続、番組と人員の縮小といった出口の設計は、免許人である自治体の判断に委ねられる。放送の継続には人件費や設備の維持費がかかり続けるため、復興関連の財源が細った後に一般財源で支え続けるかどうかが、閉局時期の実質的な決め手になりやすい。
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