ジチテン

広域医療搬送

読み:こういきいりょうはんそう

意味

広域医療搬送とは、大規模災害で被災地の医療能力が不足した際に、重症者を自衛隊機などを用いて被災地外の医療機関へ航空搬送する仕組みである。

被災地の災害拠点病院が満床になり、それでも救える重症者がなお残るとき、命を救う最後の手段は被災地の外へ運び出すことである。広域医療搬送は、こうした被災地内で対応しきれない重症者を、自衛隊機や民間機を使って遠隔地の医療機関へ運ぶ国の枠組みで、政府の防災基本計画災害医療の体制に位置づけられている。搬送の起点には、被災地の空港など拠点に設けられる広域搬送拠点臨時医療施設(SCU)があり、ここでDMATが患者の状態を安定させ、搬送に耐えうるかを判断したうえで航空機に載せる。難しいのは、誰を運ぶかというトリアージ、限られた航空機と時間という制約、受け入れ先の病院の確保を同時に調整しなければならない点である。南海トラフ地震首都直下地震のように被害が広域に及ぶ想定では、この搬送をどれだけ早く立ち上げられるかが救命の鍵を握る。

SCU(広域搬送拠点臨時医療施設)という結節点

広域医療搬送の現場では、被災地の空港や大規模施設にSCU(Staging Care Unit)と呼ばれる臨時の医療施設が立ち上げられる。ここにDMATが集まり、被災地内から運ばれてきた重症者の状態を安定化させ、長時間の航空搬送に耐えられるかを評価したうえで機内に収容する。SCUは「治療する場」ではなく「搬送のために容体を整え、振り分ける中継点」であり、ここが詰まると搬送全体が滞る。設置場所には自衛隊機が発着できる空港・基地が選ばれることが多く、被災地側と受け入れ地側の双方にSCUを置いて両端で容体を管理する。

平時の調整なしには動かない

広域医療搬送は自衛隊・消防・医療・空港管理者が同時に関わるため、発災後に一から段取りしていては間に合わない。航空機の確保ルート、SCUを設ける候補地、受け入れ先となる被災地外の病院をあらかじめ計画に書き込み、訓練で手順を確かめておく必要がある。受け入れ側の都道府県にとっても、突然運ばれてくる重症者をどの病院で受けるかという受援の備えが問われる。政府の防災基本計画や広域医療搬送計画にこれらの段取りが位置づけられており、合同訓練を重ねて関係機関の役割を確かめておくことが立ち上げの速さを左右する。

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