換価の猶予とは、滞納者が一時に滞納処分による換価をすると事業の継続や生活の維持が困難になるなどの場合に、地方団体の長が職権または申請に基づき、差し押さえた財産の換価を一定期間猶予する制度をいう。
滞納整理の現場で、財産を差し押さえたものの直ちに売却すると滞納者の再起や納税意欲を損なうとき、どう猶予を組み立てるか。換価の猶予は、徴収を放棄せずに分割納付へ誘導するための回収手段である。地方税法は職権による換価の猶予に加え、平成28年度から納期限から6か月以内の申請による換価の猶予を設けた。猶予期間は原則1年以内で、やむを得ない理由があればさらに1年まで延長でき、期間中は分割納付の計画を定める。猶予に伴い延滞金の一部が免除されるほか、新たな差押えや既存の差押えの解除も判断材料となる。徴収猶予が課税・納付の段階で納税を待つ制度であるのに対し、換価の猶予は差押え後の換価段階で売却を待つ点で局面が異なる。
職権の猶予と申請による猶予
換価の猶予には、地方団体の長が滞納者の事情を踏まえて職権で行うものと、滞納者の申請によるものの二つがある。申請による換価の猶予は平成26年度の地方税法改正で創設され、平成28年度から運用が始まった。申請は原則として納期限から6か月以内に、猶予を受けようとする金額や分割納付の方法を記載した申請書を提出して行う。ただし、申請者にすでに他の滞納がある場合や、過去に猶予を取り消されている場合などは申請が認められないことがある。職権の猶予は申請期限の制約を受けず、滞納者の事業や生活の状況を職権で把握して適用する点に特徴がある。
延滞金の免除と分割納付計画
換価の猶予が認められると、猶予期間に対応する延滞金のうち一定割合が免除される。これは一時の納付が困難な滞納者の負担を軽減し、自主的な完納を促すための措置である。猶予を受ける滞納者は、猶予に係る金額をおおむね猶予期間内の各月に分割して納付する計画を定め、これに従って納付する。計画どおりに納付されない場合や、滞納者の資力が回復した場合には、地方団体の長は猶予を取り消し、差し押さえた財産の換価手続を再開できる。猶予の判断にあたっては、担保の提供を求めることがある一方、猶予金額や期間によっては担保を不要とする取扱いもある。
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