移住支援金とは、東京23区の在住者または東京圏から23区への通勤者が東京圏外などへ移住し、就業や起業などの要件を満たした場合に支給される支援金である。国と都道府県、市町村が共同で実施する地方創生の事業で、世帯は最大100万円、単身は最大60万円が基本額である。
地方暮らしへの関心が高まっても、引っ越しと転職を同時に決断する初期負担が最後の壁になる。その壁を公費で下げ、東京一極集中の是正と地方の担い手確保を同時に狙うのが移住支援金で、まち・ひと・しごと創生の枠組みに位置付けられた国費事業である。支給には移住元(東京23区に一定期間在住、または東京圏から23区へ通勤)、移住先(東京圏外の道府県か東京圏内の条件不利地域)、仕事(都道府県のマッチングサイトに掲載された求人への就業、テレワークでの業務継続、起業支援金の採択など)の三つの要件があり、窓口は移住先の市町村である。費用は国が2分の1、都道府県と市町村が4分の1ずつを負担し、2023年度からは18歳未満の子の帯同1人につき加算額が最大100万円へ大きく引き上げられた。金額や対象の細部は都道府県の要綱と市町村の上乗せで差があるため、移住相談の現場では「いくらもらえるか」より先に要件への該当性の確認が肝心になる。
三つの要件の細部——「移住すれば誰でも」ではない
支給対象は移住の事実だけでは決まらない。移住元要件は、住民票を移す直前の10年間で通算5年以上、東京23区に在住するか東京圏の対象地域から23区へ通勤していたことが基本線で、直前の1年以上は継続していることも問われる。仕事要件は類型ごとに細かく、マッチングサイト掲載求人への就業は週20時間以上の無期雇用が条件になり、テレワーク類型は自己の意思による移住で勤務先からの命令でないこと、起業類型は都道府県の起業支援金(最大200万円)の交付決定が前提になる。支給後の定着も要件で、申請は転入後3か月以上1年以内に行い、5年以上継続して居住する意思が必要とされ、3年未満で転出した場合は全額、3年以上5年以下では半額の返還を求める運用が標準である。この細かさゆえに「東京から来たのにもらえない」という相談が窓口で頻発し、移住検討者への事前の案内が市町村の移住定住担当の重要業務になっている。
一極集中是正のKPIと自治体の独自上乗せ
本制度はまち・ひと・しごと創生総合戦略が掲げる「東京圏から地方への人の流れ」づくりの中核事業で、テレワークでの業務継続による移住が対象に加わって以降は、転職を伴わない移住という新しい型も取り込んだ。2023年度の子育て加算の引上げ(子1人につき30万円から最大100万円へ)は、単身の若者よりも子育て世帯の移住が地域の人口構造に与える効果が大きいことを踏まえた重点化である。一方で支給実績には地域差があり、雇用の受け皿やマッチングサイト掲載求人の厚みに左右されるため、支援金だけで移住が生まれるわけではない。市町村側は住宅取得補助や奨学金返還支援という独自施策を重ね、空き家バンクやお試し移住と組み合わせた誘致パッケージとして運用するのが実態で、移住支援金はその「国費の土台」と捉えるのが正確である。
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