補完性の原則(Subsidiarity)とは、行政の役割分担について「できる限り住民に近い基礎的な公共団体(市区町村)が処理し、基礎団体が処理できないものを広域自治体(都道府県)が補完し、さらに都道府県が処理できないものを国が担う」という地方分権の基本原則のことである。地方自治法第1条の2第1項は「国は、地方公共団体が基礎的な行政サービスを自主的かつ自立的に実施できるよう、国と地方公共団体との役割分担の原則に基づき、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」と規定し、この原則を体現する。
住民に身近な仕事まで国が一律に決めていては、地域の実情に合わず、住民の声も届きにくい。補完性の原則(Subsidiarity)は、できる限り住民に近い基礎的な公共団体(市区町村)が事務を処理し、市区町村が処理できないものを広域自治体(都道府県)が、さらに都道府県が処理できないものを国が担うという地方分権の基本原則である。地方自治法第1条の2第1項が、国と地方の役割分担の原則に基づき地方公共団体の自主性・自立性が十分に発揮されるようにしなければならないと定め、この原則を体現する。
補完性の原則はEUの政治統合過程で発展した概念(マーストリヒト条約:1992年)で、日本の地方分権改革でも「機関委任事務の廃止」(平成11年の地方分権一括法)を支える理念として重視されてきた。地方分権改革では「国と地方の関係を上下主従から対等協力へ変える」という理念が、補完性の原則の日本的展開として語られる。現実には国の関与(法定受託事務・是正の勧告・指示等)が残るが、自治事務の範囲を拡大し国の関与を縮小する方向での改革が続いている。
三層構造と役割分担
日本の地方自治では「国→都道府県→市区町村」の三層構造がある。補完性の原則のもとで、市区町村は住民票・保育・ごみ処理・地域の道路管理等の身近な行政サービスを担い、都道府県は高校・病院・河川管理・警察等の市区町村の区域を超える広域的なサービスを担い、国は全国一律の規制・基準・外交・防衛・社会保険制度等を担う、という役割分担の理念的枠組みが示される。「中枢は小さく、現場は大きく」という方向性が改革の指針となる。
機関委任事務の廃止との関係
補完性の原則に反する代表的な制度として「機関委任事務」(都道府県知事・市区町村長を国の機関として国の事務を処理させる制度)があった。この制度のもとでは首長は国の指揮監督下に置かれ、地方の自主性が大きく制限された。平成11年(1999年)の地方分権一括法(地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律)により機関委任事務は廃止され、自治体が処理する事務は「自治事務」と「法定受託事務」に再編された。これが補完性の原則に基づく地方分権改革の最大の成果の一つとされる。
地方分権改革の継続
2000年代以降も「地方分権改革推進委員会」(内閣府)・「地方分権改革推進会議」のもとで、義務付け・枠付けの見直し(国が法令で地方の権限を縛る規制の撤廃・緩和)や、地方からの提案に基づき国の権限移譲・規制緩和を行う「提案募集方式」が続けられている。補完性の原則は改革の「旗」として機能し、地方分権推進の理念的な支柱として引き続き重要な地位を占める。住民に最も近い市区町村が力を発揮できるよう、財源の移譲と一体で進めることが、原則を実質化するうえでの課題である。
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