総合事業とは、介護保険法第115条の45第1項に基づく地域支援事業の一つで、正式名称を「介護予防・日常生活支援総合事業」といい、要支援1・2の認定を受けた者や基本チェックリストで生活機能の低下が認められた者(「事業対象者」)に対して、市区町村が中心となって多様なサービスを提供する事業のことである。
高齢化に伴う要支援者の増加と介護給付費の膨張を背景に、全国一律の予防給付では地域ごとの実情に対応しきれないという課題があった。2015年(平成27年)の介護保険法改正は、要支援者向けのホームヘルプ・デイサービスを全国一律の予防給付から市区町村が裁量を持って運営する地域支援事業へ移し、地域の資源を活かした多様な支援への転換を図った。これが総合事業の出発点である。
事業は大きく訪問型サービス・通所型サービス・生活支援サービス・介護予防ケアマネジメントで構成される。訪問型・通所型は従来のホームヘルプ・デイサービスに相当するサービスに加えて基準を緩和した類型を含み、生活支援サービスは配食・見守り等、介護予防ケアマネジメントは地域包括支援センターが担う。サービスの種類・単価・人員基準を各市区町村が条例や要綱で設定できる「多様化」が制度の核心であり、地域の担い手育成と一体で運営される点に特徴がある。
多様なサービスとは
総合事業の「多様なサービス」とは、専門職が提供する従来型のヘルパー・デイサービスに加えて設けられた複数のサービス類型を指す。住民主体のサービスは地域のボランティアや住民グループが担う草の根型の支援であり、基準を緩和したサービスは介護福祉士でない支援員が担う入門型の支援、短期集中型サービスはリハビリ職が集中的に関与して機能改善を図るプログラムである。住民主体のサービスには介護予防サポーターや生活支援コーディネーターが関与し、地域のインフォーマルな力を介護予防に組み込む設計となっている。
基本チェックリストと事業対象者
総合事業では、要介護認定を申請する前に「基本チェックリスト」(25項目のアンケートで日常生活の状況・運動機能・栄養状態・口腔機能・認知機能・うつ傾向等を確認するもの)を活用し、生活機能の低下が認められた場合に「事業対象者」として迅速にサービスを開始できる仕組みがある。要介護認定の申請・認定手続きを経ずにサービスが利用できるため、認定待機期間中のサービス空白を防ぐ効果がある。窓口では相談内容に応じて基本チェックリストと要介護認定申請のどちらに進むかを振り分けるため、住民の状態像を的確に見立てる相談力が市区町村側に問われる。
市区町村の保険者機能としての設計
総合事業は市区町村が単価・対象要件・サービス内容を裁量を持って設計できる事業であり、地域の実情(高齢化率・インフォーマル資源の有無・地域社会の絆の強さ等)に応じた事業設計が可能である。介護予防・生活支援の担い手として地域住民・ボランティアを育成・活用する「地域づくり」と一体的に推進することが厚生労働省の推進方針であり、市区町村の生活支援コーディネーター(第1層・第2層)が核となる。国の財政支援も事業費の上限管理を伴うため、限られた財源で介護予防の効果を上げる事業設計が市区町村に問われる。
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