執行罰とは、行政上の義務を履行しない者に対し、過料を課すことを予告して心理的に圧迫し、義務の履行を間接的に強制する行政上の強制執行の一手段である。
義務違反に対して制裁ではなく履行そのものを促す手段を探すとき、制度史に残るのが執行罰である。執行罰は、義務を履行しない者に過料の賦課を予告し、その心理的圧迫によって義務の履行を促す間接強制の手法で、義務が履行されるまで反復して科すことができる点に特色がある。違反に対する制裁である行政罰とは異なり、将来の履行確保を目的とする。現行法では砂防法第36条にわずかに残るのみで、ほとんど用いられていないが、行政上の強制執行の類型を理解するうえで欠かせない概念である。代替的作為義務には代執行が用いられるため、執行罰の出番は限られてきた。
行政罰との違い
執行罰は過去の義務違反に対する制裁ではなく、義務を履行しない者に過料を予告し心理的圧迫を加えることで、将来の義務履行を確保しようとする間接強制である。代替的作為義務に限らず、他人が代わってはなしえない非代替的作為義務や不作為義務にも用いうる点に特徴がある。同一の義務違反に対し履行があるまで反復して科すことができ、これは過去の一個の違反を一回で処罰する刑罰とは目的が違うため、二重処罰の禁止(憲法第39条)には触れないと解される。これに対し行政罰は過去の違反そのものへの制裁であり、同一違反について反復はできない。執行罰の「過料」は、秩序罰としての過料が制裁であるのとは異なり、履行を促す強制金である点に注意を要する。
現行法での位置づけ
戦前は行政執行法に執行罰の一般的な根拠があったが、同法は1948年に廃止され、以後は一般法がない。現行法で執行罰を定めるのは砂防法第36条が残存するのみとされ、実際にはほとんど用いられていない。この結果、行政代執行法が代替的作為義務の代執行のみを一般的手段として認める一方、非代替的作為義務や不作為義務を強制する一般的手段は欠けたままとなっている。これは行政上の強制執行の手段が限られていることを示す代表例として論じられ、近年は条例による間接強制金の活用や、義務違反に対する公表・許可の停止といった事実上の履行確保手段で補う動きもみられる。立法論として執行罰の一般化を説く見解も古くからある。
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