資金前渡とは、特定の経費について現金支払をする必要がある場合に、職員に概括的に資金を交付し、その職員が債権者へ直接現金で支払う支出方法をいう。
出張先での旅費や、現金でしか払えない少額の需用費を、いちいち会計管理者の正規の支出手続を経て払うのは現実的でない。こうした場面で用いるのが資金前渡である。地方自治法施行令第161条が交付できる経費を限定列挙しており、外国で支払う経費、官公署に対して支払う経費、隔地払の方法によりがたい経費、旅費、報償金などが対象となる。資金の交付を受けた職員を資金前渡職員と呼び、交付目的の範囲内で自己の責任において債権者を確定し現金で支払う点に特色がある。支払後は精算が義務づけられ、残額があれば返納し、関係書類を添えて会計管理者に精算する。確定債務に対して債権者本人へ支払う前金払や、債務金額が未確定の段階で概算額を払う概算払とは、支払の名宛人と現金交付の構造が異なる。
資金前渡職員の責任と精算
資金前渡では、資金の交付を受けた職員(資金前渡職員)が、交付の目的の範囲内で自らの判断により債権者を確定し、現金で支払う。正規の支出が会計管理者の審査を経て債権者へ直接払うのに対し、資金前渡は支払の権限と現金が職員の手に渡る点で例外的であり、それゆえ職員には善良な管理者の注意義務と精算義務が課される。支払が終われば、領収書その他の関係書類を添えて遅滞なく精算しなければならず、交付額に残余があれば返納する。現金を取り扱う以上、亡失や誤払のリスクを伴うため、交付額は必要最小限にとどめ、用途を限定して運用するのが原則である。
前金払・概算払との区別
資金前渡・前金払・概算払はいずれも正規の支出原則の例外だが、構造が異なる。前金払は、確定した債務について履行期前に債権者本人へ支払うもので、相手は債権者である。概算払は、債務金額が未確定の段階で概算額を債権者へ払い後日精算するもので、これも相手は債権者である。これに対し資金前渡は、債権者ではなく職員へ資金を交付し、その職員が債権者を確定して支払う点で名宛人が異なる。三者はいずれも地方自治法施行令で対象経費が限定されており、混同して運用すると不適正な支出として監査で指摘される。
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