青少年健全育成条例とは、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある図書類や行為を規制するために都道府県などが制定する条例の総称である。青少年保護育成条例などの名称も用いられ、有害図書類の指定、深夜外出の制限、青少年との淫行の禁止などを罰則付きで定める。
国には「青少年保護法」に当たる一般法が存在せず、この領域は半世紀以上にわたり条例が担ってきた。規制の柱は三つある。第一に有害図書類等の規制で、知事が個別に指定する方式と、基準に該当すれば自動的に有害図書類となる包括指定方式を併用し、指定された図書類は青少年への販売禁止や区分陳列、自動販売機への収納制限の対象になる。第二に深夜(おおむね午後11時から翌朝4時)の青少年の連れ出しや深夜営業施設への立入りの制限、第三に青少年との淫行・わいせつ行為の禁止である。罰則を伴う条例の代表格であるため憲法上の争いも繰り返され、淫行処罰規定と有害図書の包括指定はいずれも最高裁が合憲と判断している。運用面では知事部局の青少年担当課が所管し、書店・コンビニエンスストアへの立入調査、青少年問題に関する審議会への諮問を経た有害図書指定、業界団体との自主規制の調整が日常業務になる。インターネット上の情報には条例の手法が及びにくく、フィルタリング促進など国の法律との役割分担が現代的な課題である。
規制の合憲性を画した二つの最高裁判例
青少年健全育成条例の法的基盤を固めたのが二つの最高裁判例である。福岡県青少年保護育成条例事件(最高裁大法廷1985年判決)は、青少年との「淫行」を処罰する規定について、広く青少年との性行為一般を処罰するものと読めば広すぎるとしつつ、青少年を誘惑や威迫などで自己の性的欲望を満足させる対象として扱う行為などに限定して解釈することで合憲とした。限定解釈の手法と、条例による処罰規定の許容範囲を示した憲法判例として知られる。岐阜県青少年保護育成条例事件(最高裁1989年判決)は、有害図書の包括指定と自動販売機への収納禁止について、青少年の健全育成という目的の正当性と自販機販売の特性(対面確認が働かない)を踏まえて表現の自由に反しないと判断した。この二つにより、各都道府県は淫行処罰・有害図書規制という条例の中核部分を安定的に運用できるようになった一方、規定の文言や指定基準は判例の趣旨に沿って限定的に運用しなければならない構造になっている。
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)