裁量権の逸脱・濫用とは、行政庁の裁量に委ねられた処分が、裁量権の範囲を超えまたは裁量権を濫用した場合に違法となることをいい、行政事件訴訟法第30条がこれを取消事由と定める。
懲戒処分や許認可の拒否を裁判で争われたとき、裁量処分であっても無条件に適法なわけではない。その違法を画する基準が裁量権の逸脱・濫用である。行政事件訴訟法第30条は、裁量処分について裁量権の範囲を超えまたは濫用があった場合に限り裁判所がこれを取り消せると定める。裁量の範囲内であれば当不当の問題にとどまり違法とはならないが、事実誤認、目的違反、動機の不正、平等原則・比例原則違反などがあれば逸脱・濫用として違法となる。判例は、社会通念に照らし著しく妥当を欠くかどうかという基準で審査しており、自治体の懲戒処分や営業許可の判断もこの枠組みで争われる。
審査の基準と手法
裁判所は裁量処分について、判断の前提となった事実に誤認がないか、考慮すべき事項を考慮し考慮すべきでない事項を考慮していないか、判断が社会通念に照らし著しく妥当を欠かないか、といった観点から審査する。これらは判断過程統制と呼ばれ、裁量審査の中心的手法となっている。前提事実の誤認や他事考慮があれば、結論の当不当に立ち入らずとも判断過程の合理性を欠くものとして違法と評価できるため、行政側は処分にあたり考慮要素を漏れなく拾い、無関係な事情を排した記録を残しておく必要がある。
適用される原則
逸脱・濫用の判断では、平等原則(合理的理由なく異なる扱いをしない)、比例原則(規制目的と手段の均衡、より制限的でない手段の選択)、信義則・信頼保護(先行する公的見解を信頼した私人の保護)などの法の一般原則が違法判断の物差しとして用いられる。これらは明文の規定がなくても裁量統制の基準として機能し、たとえば過去の取扱いと合理的理由なく異なる処分をすれば平等原則違反、軽微な違反に重い処分を科せば比例原則違反として、逸脱・濫用の評価に結びつく。さらに、本来考慮すべき事項を考慮せず無関係な事項を考慮した他事考慮、処分の目的と異なる動機による目的違反も、裁量の範囲を逸脱・濫用したものと評価される。行政側は処分にあたり、これらの原則に照らして判断の根拠と均衡を記録に残しておくことが、後の争訟で裁量の合理性を示す支えとなる。
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