行政対象暴力とは、行政機関やその職員に対し、不当な要求を通すために行われる暴力・脅迫・威圧・執拗なつきまといなどの違法・不当な行為の総称である。職員の安全と公正な行政運営を脅かすものとして対策の対象となる。
窓口での執拗なクレーム、許認可や生活保護の決定に不満を持つ者からの威圧、議会や首長を巻き込んだ不当な圧力など、行政の現場では正当な意見表明を超えた暴力的・威圧的な働きかけが起こりうる。行政対象暴力は、こうした不当要求行為を職員個人の問題とせず、組織として防御すべき課題と捉える概念である。職員が一人で抱え込めば、不当な要求に屈して公正さを欠く決定をしたり、心身を損なったりする危険があるため、複数対応・記録・警察との連携・弁護士への相談・毅然とした対応マニュアルの整備といった組織的な対応が要る。暴力団による不当要求(いわゆる行政対象暴力)への対策は暴力団排除条例とも結びつき、近年は一般の住民による過度なカスタマーハラスメントも含めて、職員を守る安全配慮義務の一環として位置づけられている。
組織的対応がなぜ要るか
行政対象暴力への対応の核心は、職員個人の交渉技術ではなく組織としての防御体制にある。担当者が単独で対応すれば、相手の威圧に押されて不当な要求に応じてしまう、言質を取られる、暴行を受けるといった危険があり、また「言った・言わない」の水掛け論にもなる。このため複数人での対応、対応経過の記録、面談場所の限定、対応時間の管理、上司への即時報告といった手順をマニュアル化し、組織として一貫した対応をとる体制が要る。不当要求に対しては要求の正当性を冷静に切り分け、正当な部分には誠実に応じつつ、不当な部分には毅然と応じないという線引きが基本となる。
警察・弁護士・条例との連携
暴力・脅迫・面会強要・庁舎内での居座りなどが刑罰法令(暴行・脅迫・威力業務妨害・不退去罪等)に触れる場合、行政は警察への通報・被害届の提出をためらわない姿勢が重要となる。暴力団等の関与が疑われる事案では、団体の暴力団排除条例や警察・暴力追放運動推進センターとの連携が機能する。さらに、顧問弁護士による助言や、悪質なつきまとい・架電に対する法的措置の検討も組織的対応の一部である。職員を不当な攻撃から守ることは、使用者としての安全配慮義務の履行でもあり、対応体制の整備は職員のメンタルヘルス対策と表裏一体で進められる。
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