秩序維持権とは、地方自治法第104条および第129条等に基づき、議長が議場の規律を保つため、議事を妨げる議員に対し制止、発言取消しの命令、退場命令などを行う権限である。
議員が議場で大声を出して議事を妨げたとき、議長はどこまでの措置をとれるのか。秩序維持権は、議長が議場の規律を保つために行使する権限である。地方自治法第129条は、議場の秩序を乱す議員があるときは議長が制止し、または発言を取り消させ、命令に従わないときはその日の会議が終わるまで発言を禁止し、もしくは議場の外へ退去させることができると定める。さらに第130条は傍聴人が秩序を妨げるときの退場措置を規定する。秩序維持権は議事を円滑に進める議事整理権と並んで、議長が会議体を運営するための車の両輪をなす。権限の行使は議長の判断に委ねられるが、議員の発言権を不当に奪わないよう、中立かつ必要最小限にとどめる運用となっている。
秩序維持権と懲罰の関係
秩序維持権による発言の制止や退場命令は、その日の会議における一時的な措置であり、議員の身分に影響する制裁ではない。これに対し、議場の秩序を著しく乱した議員に対しては、議会が議決によって戒告、陳謝、出席停止、除名といった懲罰を科すことができる。秩序維持権はその場で議長が単独の判断で行う即時的な統制であるのに対し、懲罰は議会の議決を経て科す処分であり、根拠も手続も性格も異なる。退場を命じられた議員に対し、後にその言動を理由として議会が懲罰を議決することもあり、両者は連続して問題となる場面がある。
議長への一任
秩序維持権は議長個人の権限であり、その行使に議会の議決を要しない。議長は議場が騒然として整理が困難なときは、その日の会議を閉じ、または中止することもできる。もっとも、退場命令などの強い措置をとった場合、その当否が後に議会で問題となることがある。このため議長は、制止や警告の経過、命令の理由などの事実関係を会議録に明確に残し、権限行使の正当性を後から説明できるようにしておく運用が一般的であり、恣意的な行使と受け取られないための備えとなる。
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