地域猫活動とは、飼い主のいない猫を地域住民の合意のもとで管理し、不妊去勢手術を施したうえで給餌やトイレの世話をしながら一代限りの生を見守ることで、頭数と生活環境被害を時間をかけて減らしていく取組をいう。
野良猫への餌やりを禁止しても、なぜ苦情は止まらないのか。猫は繁殖力が強く、排除や放置では数が減らないうえ、飼い主のいない猫も動物愛護管理法上の愛護動物であり、みだりに殺傷すれば犯罪になる。駆除という選択肢が法的に封じられているなかで、糞尿・鳴き声の苦情と餌やりをめぐる住民どうしの対立を解く現実解として広がったのが地域猫活動である。核になるのはTNRと呼ばれる手法で、捕獲(Trap)し、不妊去勢手術(Neuter)を施し、元の場所に戻す(Return)。手術済みの猫は耳先をV字にカットして識別し、その姿から「さくらねこ」とも呼ばれる。自治体は手術費の助成、活動ガイドラインの策定、自治会とボランティアの橋渡しという調整役を担い、環境省のガイドラインも住宅密集地での飼い主のいない猫対策としてこの方式を位置づけている。
TNRと「地域猫」は同じではない
TNRは不妊去勢手術の手法を指すのに対し、地域猫活動はその先の管理までを含む地域の合意形成スキームである。誰が餌をやり、誰がトイレを掃除し、苦情の窓口を誰が引き受けるかを自治会、ボランティア、行政の三者で取り決め、手術済みの猫を「地域で管理されている猫」として見守る。この合意がないまま手術と餌やりだけが行われると、「公認の餌やり場」と受け取られて猫が集まり、苦情がかえって増える失敗に陥る。手術費用には自治体の助成のほか、公益財団法人どうぶつ基金の無料手術チケットに行政枠があり、財源の乏しい市町村でも活動を支えられる仕組みが使われている。
成果指標は引取り数と殺処分数
地域猫活動の効果は即効ではなく、一代限りの猫が寿命を終えるまでの数年から十数年をかけて頭数が漸減する。行政側の成果指標としては、保健所・動物愛護センターへの猫の引取り数、路上死体の回収数、殺処分数の推移が使われ、子猫の発生源対策として機能したかどうかが読み取れる。猫には狂犬病予防法のような登録制度がなく飼い猫との区別が外見では難しいため、屋外飼育の飼い猫や遺棄された猫が活動地域に流入する問題も残る。多頭飼育崩壊の現場から不妊去勢されないまま猫が放出されると活動が一気に巻き戻されるため、飼育相談・遺棄防止の啓発と一体で進めることが定着の条件になる。
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