ジチテン

全体の奉仕者

読み:ぜんたいのほうししゃ

意味

全体の奉仕者とは、公務員が一部の者ではなく国民・住民全体の利益のために職務を行う存在であることを示す概念である。憲法第15条第2項に定められ、公務員の服務の根本基準とされる。

公務員が誰のために働くのかという原点を示し、服務上の各種義務の出発点となる理念である。私企業の従業員が雇い主の利益のために働くのに対し、公務員は特定の党派・団体・個人ではなく住民全体の奉仕者でなければならない。憲法第15条第2項はこれを明記し、地方公務員法もこれを受けて服務の根本基準として「全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、職務の遂行に当たっては全力を挙げてこれに専念しなければならない」と定める。この理念から、職務専念義務政治的行為の制限争議行為の禁止といった具体的な服務上の制約が導かれる。

服務義務の根拠となる理念

全体の奉仕者という観念は、抽象的な理念にとどまらず、公務員に課される具体的な服務義務の根拠となっている。住民全体に奉仕すべき立場だからこそ、勤務時間中は職務に専念しなければならず(職務専念義務)、特定の政党を利するような政治的行為は制限され(政治的行為の制限)、住民生活に重大な影響を及ぼす争議行為は禁じられる(争議行為の禁止)。個々の義務を暗記するより、それらが「全体の奉仕者」という一点から派生していると理解すると、服務制度の全体像がつかみやすい。

一部の奉仕者であってはならないという含意

憲法第15条第2項は「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定する。この「一部の奉仕者ではない」という否定の側面が重要で、公務員が特定の政党・宗教・地域・有力者など一部の利益のために職権を用いることを戒めている。特定の者への便宜供与や、特定団体に偏った運用は、この理念に反する。住民全体の利益を等しく図るという中立・公平の要請は、ここから導かれ、公務員倫理や信用失墜行為の禁止とも通底する。

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