産業医とは、労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場に選任が義務づけられる医師であり、職員の健康管理・作業環境の評価・健康診断の事後措置などを担う専門職である。
産業医は、職場で働く人の健康を、医学の専門的な立場から支える医師である。医師免許を持ち、定められた研修を修了した者が選任される。常時1000人以上の事業場では常勤の専属産業医が必要となるが、市区町村の規模では、月に1〜2回程度訪問する非常勤の嘱託産業医が業務を担う形が多い。
地方公共団体も、事業場として産業医の選任が義務づけられる。2019年の労働安全衛生法の改正により、産業医の権限が強化され、事業者は、産業医が勧告した措置について記録し保存する義務を負うようになった。また、産業医は、職員の健康管理に必要な、時間外労働の記録やストレスチェックの結果といった情報にアクセスできる権限を与えられた。働く人の健康を守るうえで、独立した専門職としての役割が重みを増している。
産業医の主な職務
産業医の職務は多岐にわたる。第一に、月に1回以上、職場を巡視し、作業環境や設備、衛生の状態を確認する職場巡視である。第二に、健康診断を実施し、その結果を把握して、過重な労働や有害な業務に従事する職員について就業上の意見を述べることである。第三に、長時間の時間外労働を行った職員や、高ストレス者、休職から復帰しようとする職員に対する面接指導である。第四に、生活習慣病の予防やメンタルヘルスに関する衛生教育・保健指導である。第五に、毎月の安全衛生委員会に出席し、健康管理について専門的な助言を行うことである。これらによって、病気の予防と、働く環境の改善の双方に関わる。
地方公共団体に固有の課題
地方公共団体の職員の健康管理には、固有の難しさがある。第一に、庁舎内の行政職に加え、学校・保育所・福祉施設・清掃や道路維持といった現業・消防など、性質の異なる職場が混在することである。第二に、議会の会期や災害への対応といった繁忙期に、深夜や長時間の不規則な勤務が発生することである。第三に、職員数の規模によって専属・嘱託の選任の基準が変わることである。とりわけ規模の小さい市区町村では、産業医を確保すること自体が難しい場合があり、都道府県や、国が設ける産業保健の支援機関の助けを借りることもある。多様な職場を抱える自治体ならではの健康管理の体制づくりが問われる。
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