災害多言語支援センターとは、災害時に外国人住民へ必要な情報を多言語で届けたり相談に応じたりするため、自治体や地域国際化協会が設置する拠点である。
避難指示や給水の場所といった命にかかわる情報が日本語の防災行政無線でしか流れなければ、日本語を解さない外国人住民は逃げ遅れる——この情報の空白を埋めるために立ち上げるのが災害多言語支援センターである。発災時、市区町村や都道府県の国際交流協会が、災害対策本部が出す情報を平易な日本語ややさしい日本語、英語・中国語など複数言語に翻訳して避難所やSNSで発信し、外国人からの相談に多言語で対応する。担い手は語学ボランティアや在住外国人コミュニティで、平時から登録・研修を進め、設置・運営の手順をあらかじめ訓練しておくことが立ち上げの速さを左右する。難しいのは、翻訳すべき情報が刻々と更新されるなかで正確さと速さを両立させること、そして難解な行政用語を、専門知識のない外国人にも伝わる表現へかみ砕く点である。総務省は地域防災計画にこのセンターの設置を位置づけるよう促しており、外国人を「支援される対象」だけでなく情報の担い手として巻き込む運営が広がりつつある。
「翻訳」より前に「やさしい日本語」
災害多言語支援センターの実務では、すべての情報を多言語に翻訳する余力はないことが多く、まず難解な行政用語を平易に言い換える「やさしい日本語」で発信し、需要の高い言語へ順次翻訳する優先順位づけがとられる。「高台へ避難してください」を「たかい ところへ にげてください」と書き換えるように、漢語や敬語を避けて短く区切る工夫が、限られた人手で最大の住民に届かせる鍵になる。翻訳人材が薄い少数言語の話者には、この日本語の平易化が事実上の生命線になる。
平時の体制づくりが立ち上げ速度を決める
センターは発災後にゼロから人を集めて作れるものではなく、地域国際化協会や自治体が平時に語学ボランティアの登録、運営マニュアルの整備、設置・運営の訓練を積んでおいて初めて、混乱のなかで速やかに立ち上がる。総務省や自治体国際化協会は地域防災計画への位置づけと立ち上げ訓練を促しており、在住外国人自身を翻訳や情報伝達の担い手として組み込むことで、支援する側の人手不足を補う運営が試みられている。発災時に拠点となる場所や使用機材も平時に決めておかないと、立ち上げの初動でつまずく。
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