環境基準とは、環境基本法第16条に基づき、人の健康を保護し生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準として政府が定める行政上の目標値である。大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音について類型ごとに数値が設定されている。
排水基準や排出基準の数値を見るたびに「これは守らないと罰せられる規制値か、それとも到達を目指す目標か」と迷う場面は実務で多い。環境基準は前者ではなく後者であり、事業者を直接拘束する規制基準ではなく、行政が施策を講じて達成・維持に努める政策目標として置かれる。たとえば二酸化窒素や微小粒子状物質(PM2.5)の年平均値、河川のBOD、海域のCODなどに類型あてはめのうえ基準値が決まる。規制基準である排出基準や排水基準は、この環境基準を地域で達成するための手段として、環境基準より厳しめに逆算して設定されることが多い。自治体の環境部局は常時監視測定局のデータと環境基準を照合し、達成状況を年次で公表する。基準を超過した地域では、発生源対策や総量規制の追加投入が検討される。
規制基準との違い
環境基準は達成目標であり、これに違反しても直ちに罰則や改善命令の対象になるわけではない。事業者を法的に拘束するのは、大気汚染防止法の排出基準や水質汚濁防止法の排水基準といった規制基準である。環境基準は、その地域でこれらの規制基準をどの程度の厳しさで運用すべきかを決める際の到達点として機能する。環境基本法は環境基準を「維持されることが望ましい基準」と定め、行政が施策を進めるうえで常に達成・維持に努める行政上の目標と位置づける。規制基準が個々の排出源を縛るのに対し、環境基準は大気や水域そのものの状態を測る物差しである点で性格が異なる。
類型あてはめ
水質や騒音の環境基準は、水域や地域の利用実態に応じた複数の類型から成り、どの類型を当てはめるかを都道府県知事等が指定する。同じ数値ではなく、利水目的や住居地域・商業地域といった区分ごとに異なる値が適用される点が特徴である。たとえば水質ではAA類型からの段階区分で水道用水や水産用水としての利用目的ごとに基準値が変わり、騒音では地域の用途に応じて昼夜別の値が定められる。実態に合わない類型を当てはめると過剰または過小な規制につながるため、利用実態の把握に基づく指定が前提となる。
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