意思疎通支援事業とは、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業の必須事業として、聴覚や言語機能等の障害により意思疎通に支障がある人へ、手話通訳者や要約筆記者の派遣等を行う市町村・都道府県の事業をいう。
聴覚障害のある住民が、市役所の窓口や病院の診察で自分の意思を確実に伝えるための手立てを、誰が保障するのか。その答えにあたる公的サービスが意思疎通支援事業である。障害者総合支援法第77条は市町村の必須事業として、手話通訳者・要約筆記者を派遣する事業と、窓口対応等のために手話通訳者を設置する事業を定める。第78条は都道府県の事業として、手話通訳者や盲ろう者向け通訳・介助員の養成と、複数市町村にまたがる広域的な派遣や専門性の高い派遣を位置づける。2013年施行の障害者総合支援法で、それまでのコミュニケーション支援事業から名称が改められ、手話や要約筆記に加えて、点訳、代筆・代読、音声訳等の手段や、重度の身体障害、知的障害、失語症のある人への支援も射程に含むことが明確化された。利用者の負担は無料とする市町村が大半で、医療機関の受診、学校行事、講演会への参加といった生活場面の申請に応じて通訳者を派遣する。
市町村と都道府県の役割分担
意思疎通支援事業の運用は、派遣の市町村、養成と広域調整の都道府県という分担で組み立てられている。市町村は登録した手話通訳者・要約筆記者を個別の依頼に応じて派遣し、本庁窓口に手話通訳者を設置して来庁者対応にあてる。都道府県は手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員、失語症者向け意思疎通支援者の養成研修を実施し、市町村域を越える行事や専門性の高い場面(裁判、医療の重要な説明等)の派遣を受け持つ。実務上の課題は担い手の確保で、手話通訳者の登録試験の合格までに長期の学習を要する一方、報酬単価が低く高齢化も進むため、派遣依頼に応えきれない地域が生じている。聴覚障害者が緊急入院した場面や災害時の避難所での意思疎通をどう確保するかも、平時の登録者数と派遣体制に依存するため、近隣市町村との相互応援や遠隔手話通訳の導入が補完策として広がりつつある。
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