ジチテン

複合災害

読み:ふくごうさいがい

別名:複合災害対応
意味

複合災害とは、地震と津波、感染症と風水害のように、複数の災害が同時または連続して発生し、単独の災害よりも被害が拡大し対応が著しく困難になる災害事象である。

ひとつの災害を想定して組んだ計画も人員配置も、別の災害が重なった瞬間に前提から崩れる。地震で開いた避難所に大雨が迫り、感染症の流行下で台風が襲えば、平時の手順だけでは被災者を守りきれない。複合災害をあえて一つの概念として立てるのは、災害の重なりが単独災害の足し算では済まないからである。

災害対策本部に複数の事象が同時に押し寄せて処理が輻輳し、近隣自治体も同時に被災して頼みの応援が来ない、といった単独災害にはない困難が生じる。内閣府は同時または連続して2以上の災害が発生する場合を複合災害と呼び、令和4年版防災白書で事前防災・複合災害ワーキンググループの提言を示すなど、対応の標準化を進めている。

単独災害の想定が通用しない三つの重なり方

複合災害は重なり方で性質が変わる。地震が火災や津波を引き起こす連鎖型、台風と感染症の流行が同時期に重なる同時多発型、本震の被害が残るうちに豪雨が襲う時間差型に大別される。連鎖型は最初の災害への対応中に次が来るため初動が遅れ、同時多発型は被害が広域に分散して資源が薄まり、時間差型は復旧途上の脆弱な状態を直撃する。内閣府は原子力災害と自然災害が重なる事態も複合災害として想定し、避難の枠組みを別立てで整理している。単独の災害シナリオを足し合わせるだけでは、この相互作用は見えてこない。

応援の前提が崩れる——同時被災と受援

災害対策基本法は市区町村相互の応援(第67条)や都道府県による応援(第68条)を定め、自治体の防災は近隣との助け合いを前提に組まれている。ところが複合災害では、頼みの近隣自治体も同時に被災して応援の余力を失い、この前提そのものが崩れる。だからこそ遠隔地の自治体との防災協定や、応援を受け入れる側の段取りを定めた受援計画が要になる。受け入れ場所・指揮系統・物資集積拠点を平時に決めておかなければ、応援部隊が到着しても動かせない。

一つの本部で複数の事象を捌く

複合災害では、性質の異なる災害を単一の災害対策本部が同時に統括することになる。情報収集・避難・救助・物資・広報の各機能に複数の事象からの要求が同時に流れ込み、限られた人員をどの事象のどの局面に振り向けるかという優先順位の判断が連続する。新型コロナウイルス感染症の流行下では、避難所の過密を避ける分散避難と通常の避難所運営との両立が各地で課題となり、複合災害対応の実地の教訓として蓄積された。本部運営に習熟していなければ、事象ごとの対応が互いに干渉して全体が停滞する。

ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)