職務命令とは、上司が職務上の指揮監督権に基づき、部下である職員に対してその職務の遂行に関して発する命令をいう(地方公務員法第32条)。
組織として動く以上、職員は自分の判断だけで動くわけにはいかず、上司の指示に従って職務を行う。だが命令が違法だったら従うべきか、という問いが残る。職務命令は、この上司から部下への指示を制度として捉えた概念である。
地方公務員法32条は、職員が上司の職務上の命令に忠実に従う義務を定める。職務命令には、出張や担当替えのように職員の身分取扱いに関するものと、具体的な事務の処理方法に関するものがある。命令が有効に成立するには、権限ある上司が発し、職務に関する事項であることなどが要る。重大かつ明白な違法がある命令には従う義務がないが、軽微な瑕疵にとどまる命令には一応従う義務があると解されており、どこで従う義務が切れるかが実務の論点になる。
命令に従う義務とその限界
地方公務員法32条は、職員は職務を遂行するにあたって、法令等に従うとともに、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならないと定める。もっとも、すべての命令に無条件で従う義務があるわけではない。一般に、命令が権限ある上司から発せられ、職務に関する事項であり、法律上不能を命じるものでないなどの要件を満たして初めて有効な職務命令となる。命令に瑕疵がある場合、その瑕疵が重大かつ明白で命令が無効と評価されるときは従う義務がないが、取り消しうるにとどまる瑕疵の場合は、職員は一応従ったうえで適法性を争うべきと解されている。職員には命令の適法性を実質的に審査する権限はないため、明白な違法でない限り従う義務が残る。
違反の効果と職務専念義務との関係
正当な理由なく職務命令に従わない場合、職員は服務義務違反として懲戒処分の対象となりうる。職務命令違反は、欠勤・職務怠慢などとともに、地方公務員法上の信用失墜行為や職務専念義務違反と並んで処分事由の典型である。一方で、上司の側も職務命令権を恣意的に用いることは許されず、職員の人格を不当に害する命令や、業務上の必要性を欠く命令は権限の濫用として違法となりうる。職務命令は組織の統制を支える基本でありながら、その正当性は職務上の必要性と法令適合性によって限界づけられる。
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)