歴史的風致維持向上計画とは、歴史的建造物とそこで営まれる人々の活動が一体となった良好な環境(歴史的風致)を維持・向上させるため市町村が定め、国の認定を受ける計画である(地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律第5条)。
城下町や宿場町、社寺の門前町などには、歴史的な建造物と、祭礼や伝統的な生業といった人々の活動が一体となった独特の環境がある。これを歴史的風致と呼び、建物だけ、活動だけを守るのでは保てない。歴史的風致維持向上計画は、いわゆる歴史まちづくり法に基づき、市町村がこの歴史的風致を維持・向上させる重点区域と事業を定め、国(主務大臣)の認定を受ける計画である。認定を受けると、歴史的建造物の修理・修景や周辺環境の整備に国の支援が受けられ、関連する法律の特例も活用できる。文化財保護と都市計画、観光振興にまたがる総合的な計画であり、文化財部局・都市計画部局・観光部局の連携が運用の鍵になる。
「歴史的風致」という概念
歴史的風致維持向上計画の核心は、「歴史的風致」という独自の概念にある。歴史的風致とは、地域固有の歴史と伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる歴史上価値の高い建造物およびその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境をいう。たとえば、社寺とその門前で続く祭礼、武家屋敷とそこでの暮らし、酒蔵とその醸造といった、ハードの建造物とソフトの活動が結びついた環境である。建造物の保存だけでも、伝統行事の継承だけでもなく、両者が一体となった環境を守り高めることを目的とする点が、従来の文化財保護や景観行政と異なる。
認定の効果と関係制度との連携
市町村が定めた歴史的風致維持向上計画は、主務大臣(文部科学大臣・農林水産大臣・国土交通大臣)の認定を受けて効力を持つ。認定を受けると、計画に位置づけた歴史的建造物の復原・修理や、周辺の道路・公園など環境整備の事業に国の財政支援が受けられるほか、歴史的風致形成建造物の指定による保全や、屋外広告物・都市計画に関する特例などを活用できる。計画の対象区域は、重要文化財や重要伝統的建造物群保存地区などの文化財制度とも重なることが多く、文化財保護法による保存と、都市計画・景観行政による周辺環境の整備を組み合わせて運用する。複数の部局と制度にまたがるため、庁内の連携体制づくりが計画推進の前提となる。
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