救急搬送とは、消防法第2条第9項に規定する救急業務の一環で、救急隊員(消防職員)が救急車で傷病者のもとに駆け付け、現場での応急処置(止血・心肺蘇生等)を行いながら医療機関に搬送する一連の活動のことである。市区町村が設置する消防本部・消防署が実施し、2022年度の全国の救急出動件数は約723万件(消防庁調査)と過去最高水準が続く。
急病やけがで命に関わる事態は時間との勝負であり、現場での処置と医療機関への搬送が遅れれば救える命も救えない。救急搬送は、救急隊員が救急車で傷病者のもとへ駆け付け、応急処置を施しながら医療機関へ運ぶ一連の活動であり、発症・受傷から治療までの空白を埋めて救命率を高める点に意味がある(消防法第2条第9項)。
実施主体は市区町村が設置する消防本部で(消防法第35条の3)、消防本部のない小規模市区町村は消防事務を都道府県に委託するか消防事務組合を設けて処理する。高齢化や急病・事故による救急需要の急増に対し、救急隊の増隊、救急救命士の養成、救急安心センター(♯7119)による軽症者への電話案内などの取り組みが進む。2022年度の全国の救急出動件数は約723万件と過去最高水準が続く。
救急需要の急増と課題
救急出動件数は少子高齢化の進展に伴い増加を続けており、2030年代には全国でさらに増加が見込まれる。出動件数の増加に対して救急隊の増隊が追いつかない地域では「救急要請から現場到着まで時間がかかる(平均到着時間の長時間化)」という問題が生じる。「軽症者・不搬送事案(自力で歩ける程度の状態なのに救急車を要請する)」への対応が本当に重症の患者への迅速な対応を妨げるという問題もある。これらの課題に対して#7119(救急安心センター事業)が電話で症状の緊急度を判定し、救急車要請の抑制・適正化に取り組む。
救急救命士と特定行為
救急救命士(救急救命士法:平成3年法律第36号)は救急車内で医師の指示のもと「特定行為」(静脈路確保・薬剤投与・気管挿管等)を実施できる国家資格保有者である。従来は医師のみが実施できた行為を救急車内で救急救命士が行えるようにすることで、病院到着前の処置の質を高める。特定行為の範囲は救急救命士法・同法施行規則で定められており、改正のたびに対象行為が拡大されてきた。消防本部は救急救命士の養成・認定・研修を担い、医師との連携(メディカルコントロール体制)を構築することが義務付けられている。
市区町村の消防行政との関係
消防業務(救急・消防)は消防法に基づく自治体固有の責務であり、市区町村が消防本部を設置して消防署を運営するか、消防事務を広域処理(消防事務組合・委託)する。救急搬送の収容先医療機関の確保は搬送の効率性・生存率に直結するため、消防本部と病院(救急告示病院・救命救急センター等)との事前協定・「救急医療情報システム」による搬送先医療機関の照会が重要となる。消防本部の規模が小さい市区町村では搬送先の選定に時間を要するケースもあり、広域的な医療体制の整備が課題となる。
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