収用委員会とは、土地収用法第51条以下に基づき都道府県に置かれる行政委員会で、公共事業のための土地収用・損失補償額の裁決を行う独立した行政機関のことである。起業者(道路・鉄道等の公共事業の施行者)と土地所有者・関係権利者との間で補償額等の合意が成立しない場合に、収用委員会が裁決によって法的拘束力を持つ決定を下す。
道路や鉄道に必要な土地を、所有者の同意が得られないからと自由に取り上げれば財産権を侵すし、逆に同意がなければ一切進められないとすれば公共事業が立ち行かない。収用委員会は、起業者と土地所有者の補償額などの合意が成立しないときに、中立の立場で土地収用と損失補償を裁決する独立の行政機関であり、公益と私有財産の調整を公正に裁く点が眼目である(土地収用法第51条以下)。
都道府県に置かれ、知事から独立した行政委員会として知事の指揮命令を受けずに裁決を行う(地方自治法第180条の5第2項)。委員は都道府県議会の同意を得て知事が任命する7名で、弁護士・建築士・土地評価の専門家などの学識経験者が選ばれる。裁決には、所有権の移転・消滅と補償金額を決める権利取得裁決と、土地の明渡し期限を決める明渡裁決の二種類がある。
収用裁決の手続き
土地収用法に基づく手続きは、まず国土交通大臣または都道府県知事による事業認定を受け、起業者が土地調書・物件調書を作成することから始まる。次に土地所有者との任意交渉を行い、合意が成立しなければ収用委員会へ裁決を申請し、委員会の審理・裁決を経て補償金の支払いと土地の引渡しに至る。任意交渉で合意(任意取得・任意契約)が成立すれば裁決申請は不要となる。実務では裁決申請に至る前に任意契約が成立する場合が多く、裁決申請は交渉の最終手段として機能する。
補償額算定の基準
収用委員会が裁決する補償額は「土地収用法第71条」が定める「近傍類地の取引価格等を考慮して算定した相当な価格」(いわゆる「正常な取引価格」=時価)を基本とする。建物等の移転補償は移転・除去に要する費用が基準となる。起業者が提示する補償額と土地所有者の希望額に大きな開きがある場合、収用委員会が現地調査・鑑定・双方の意見聴取を経て独自に算定する。収用委員会の裁決に不服のある当事者は行政訴訟(土地収用法第133条の収用裁決取消訴訟等)を提起できる。
都道府県の事務と市区町村との関係
収用委員会は都道府県の委員会であり、その事務局は都道府県の担当部局(建設部・まちづくり部等)が担う。市区町村が公共事業(道路・公園等)の起業者として土地収用を必要とする場合、都道府県の収用委員会に裁決申請を行う。市区町村の用地担当部局は、収用委員会への申請書類の作成・提出・審理への出席を担当し、弁護士・土地評価士等の専門家との連携が不可欠となる。市区町村にとって収用裁決は頻繁に経験する手続きではないため、用地担当が交渉の経緯や補償額の根拠を整理して申請に臨めるよう、日頃から任意交渉の記録を丁寧に残しておくことが裁決段階での立証を支える。
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