措置制度とは、福祉サービスの利用について、行政が必要性を判断し、提供するサービスの内容や提供先を決定して職権でその提供を行う、行政処分に基づく仕組みである。
かつて高齢者福祉や障害者福祉、保育などの社会福祉サービスは、その多くがこの措置制度によって提供されていた。利用者がサービスを選んで事業者と契約するのではなく、自治体が申請や調査に基づいて、誰にどのサービスを提供するかを行政処分として決定し、費用は自治体が事業者に支払って利用者から能力に応じた負担を求める仕組みである。2000年の介護保険制度の導入や、障害福祉における支援費制度・自立支援制度への移行によって、福祉サービスの多くは利用者と事業者の契約に基づく方式へと転換した。もっとも、虐待を受けた高齢者や児童の保護、養護老人ホームへの入所など、利用者の意思による契約になじまない場面では、現在も措置制度が残されている。
措置制度の仕組みと特徴
措置制度の核心は、福祉サービスの提供が行政の処分として行われる点にある。自治体は、要援護者からの申請や自らの調査に基づき、その者に福祉サービスを提供する必要があるかどうか、どの種類のサービスを、どの施設や事業者を通じて提供するかを判断し、これを措置として決定する。サービスの費用は、自治体が措置委託費として事業者に支払い、利用者には所得などに応じた費用の負担を求める。利用者がサービスや事業者を選ぶ余地は乏しく、行政の判断が中心となるため、公平性や確実性が確保される反面、利用者の選択や事業者間の競争による質の向上が働きにくいという指摘があった。こうした特徴が、後の契約方式への転換の背景となった。
契約方式への転換と現在の位置づけ
措置制度から契約方式への大きな転換点となったのが、2000年に始まった介護保険制度である。介護保険では、利用者が要介護認定を受けたうえで、自らサービスと事業者を選んで契約し、保険給付を受ける仕組みがとられた。障害福祉でも、支援費制度を経て障害者自立支援の枠組みへと移行し、利用者本位の契約方式が基本となった。これにより、福祉サービスの提供は措置から契約へと軸足を移したが、措置制度が完全になくなったわけではない。高齢者や児童の虐待からの保護、判断能力や身寄りの状況から契約による利用が困難な場合、養護老人ホームへの入所など、行政が職権で対応すべき場面では、現在も措置制度が重要な役割を担っている。
つながりのある用語
対比
ご意見箱(匿名で投稿できます)