公害防止協定とは、地方公共団体と事業者などとの間で、公害の防止や環境の保全のために、法令の規制を超える事項も含めて取り決める約束をいう。法令による一律の規制を補い、地域の実情に応じた対策を事業者に求める手段として用いられる。
法令による公害規制は全国一律の基準で定められるため、地域ごとの事情や、規制が及ばない事項にまでは行き届かない。公害防止協定は、こうした隙間を埋めるために、地方公共団体と事業者が個別に取り決める約束である。
工場の立地や操業にあたり、地方公共団体が事業者との間で、排出される汚染物質の量や測定の方法、事故時の対応、緑地の確保などについて取り決める。その内容には、法令の基準より厳しい数値や、法令には定めのない事項が盛り込まれることもある。住民が協定の締結に加わる例もある。協定は、法令の規制を補い、地域の実情に応じたきめ細かな公害対策を可能にする一方、その法的な性質や、約束が守られなかった場合にどこまで強制できるかをめぐっては、議論がある。地域と事業者との信頼関係を土台に、環境を守るための実際的な手段として広く用いられてきた。
法令規制を補う役割
公害防止協定の存在意義は、法令による規制を補う点にある。大気汚染防止法や水質汚濁防止法などの規制は、全国一律の基準で定められるため、人口が密集し汚染が集中しやすい地域や、特に環境の保全が求められる地域では、法令の基準だけでは不十分なことがある。また、法令が規制していない物質や事項について、地域として対策を求めたい場合もある。公害防止協定は、こうした法令の規制では対応しきれない部分について、地方公共団体と事業者が合意のうえで上乗せや横出しの取決めを行うものである。事業者にとっては、地域との良好な関係を保ち、円滑に操業するために協定に応じる意味があり、地方公共団体にとっては、規制権限の及ばない事項についても環境保全を働きかけられる利点がある。法令と協定を組み合わせることで、全国一律の規制と地域固有の事情への対応とを両立させている。
協定の法的性質をめぐる議論
公害防止協定をめぐっては、その法的な性質と実効性が長く議論されてきた。協定が、当事者を法的に拘束する契約としての性質を持つのか、それとも事業者の自主的な努力を期待する紳士協定にとどまるのかによって、約束が守られなかった場合に取りうる手段が変わる。かつては、行政指導の延長としての紳士協定的な性格が強いと見られることもあったが、裁判所は、協定の内容や締結の経緯によっては、法的な拘束力を持つ契約として、その履行を求めうることを認めてきた。たとえば、操業期限を定めた協定の効力が争われた事案で、最高裁判所は協定の拘束力を認める判断を示している。協定の実効性を高めるには、その内容を明確に定め、違反した場合の措置をあらかじめ取り決めておくことが重要となる。法令とは異なる柔軟な手段であるだけに、その法的な裏づけをどう確保するかが課題となる。
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