源内(げんない)とは、デジタル庁が内製開発した政府職員向けの生成AI利用環境であり、政府全体のAI活用基盤「ガバメントAI」として整備が進むシステムである。対話や文章作成を担う汎用AIと、国会答弁支援など行政実務に特化したAIアプリの2系統を提供する。
職員が個人契約のチャットAIに業務情報を貼り付ける——生成AIの業務利用で最初に塞ぐべき穴はここである。機密性の区分、入力情報の取り扱い、利用履歴の管理を満たした「公式に使ってよい環境」を用意しなければ、禁止令と野良利用のいたちごっこになる。源内は政府におけるその答えとして、デジタル庁が政府統一基準に基づくセキュリティ要件を満たす形で内製開発した生成AI利用環境である。名称は生成AI(Generative AI)の略「Gen AI」の読みに、江戸時代の発明家・平賀源内を重ねた命名である。
2025年5月にデジタル庁内で運用を始め、2026年には全府省庁の職員約18万人を対象とする大規模な導入実証へ広げ、2027年度からの本格利用を予定する段階展開をとる。2026年4月にはソースコードがオープンソースソフトウェア(OSS)として公開され、特定ベンダーに依存しない構造を保ちながら外部の検証と再利用に開かれた点が、行政システムの調達慣行への一つの問題提起になった。自治体でも庁内の生成AI利用環境の整備が進んでおり、政府が仕様と実装を公開しながら育てる源内は、その設計の参照点になる。
内製とOSS公開——ベンダーロックインへの回答
源内はデジタル庁のエンジニアによる内製開発で、政府統一基準に基づくセキュリティ要件を自前の実装で満たしている。外部ベンダーへの開発委託が基本だった政府情報システムにおいて、基盤的な業務環境を内製し、さらに2026年4月24日にソースコードをOSSとして公開した展開は異例である。公開の効果は3つの方向に働く。ソースコードが見えることで安全性と透明性の検証を外部ができること、特定事業者にしか保守できないベンダーロックインの構造を避けられること、政府の外——自治体や他国政府、民間——が実装を再利用・改良できることである。公開されたのは政府が実際に使う利用環境そのものであり、庁内向け生成AI環境の構築を検討する自治体にとっては、要件定義の参照実装として読める素材になっている。
段階展開——使いながら育てる導入方式
展開は一斉導入ではなく段階を踏む。2025年5月にデジタル庁内で運用を開始し、2026年1月から試験的利用(リリース1.0)、同年5月から全府省庁の職員約18万人を対象とする大規模導入実証に進み、2027年度からの本格利用(リリース3.0)を目指す行程である。機能は対話、文章作成、要約、校正、翻訳を担う汎用AIと、国会答弁支援や労働行政支援のような行政実務用AIの2系統で、実務用アプリは職員の利用実態から需要の高い業務を選んで追加されていく。利用が広がるほど行政固有の使い方の知見が蓄積され、次のアプリ開発に還元される循環を狙った設計であり、完成品を買うのではなく「使いながら育てる」導入方式そのものが、従来の政府システム調達と異なる試みになっている。指定職や管理職が率先して使う仕組みを入れた点も、利用定着策として特徴的である。
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)