共生社会とは、障害の有無や年齢、国籍などにかかわらず、誰もが排除されることなく、地域社会の一員として尊重され、ともに支え合って暮らす社会をいう。福祉や教育、まちづくりといった分野で、その実現がめざすべき理念として掲げられている。
これまでの社会は、障害のある人や高齢者などを、支えられる側として福祉の対象に分けて捉えがちであった。共生社会は、そうした線引きを越えて、誰もが地域の一員として役割を持ち、互いに支え合って暮らす社会をめざす理念である。
障害のある人もない人も、子どもも高齢者も、外国にルーツを持つ人も、同じ地域で当たり前に暮らし、学び、働ける社会をつくることが、共生社会の核心である。これは特定の一つの制度を指すのではなく、障害者施策における社会的障壁の除去、高齢者や生活に困難を抱える人を含めた地域共生社会づくり、教育における多様な子どもがともに学ぶ仕組みなど、さまざまな分野で共通してめざされる方向性である。一人ひとりの違いを前提に、それを排除せず生かし合う社会への転換を促す考え方であり、近年の福祉やまちづくりの施策を貫く理念となっている。
社会的障壁の除去という考え方
共生社会の実現を支える重要な考え方が、社会的障壁の除去である。従来、障害は専らその人の心身の機能の問題として捉えられ、本人が訓練などによって社会に適応することが求められがちであった。これに対し、近年広まったのは、障害のある人が生活するうえでの困難は、本人の機能だけでなく、それを受け入れない社会の側の壁によっても生み出されるという考え方である。段差や狭い通路といった物理的な壁、利用しにくい制度や情報、障害への偏見といった意識の壁など、社会の側にある障壁を取り除くことが、共生社会の前提となる。この考え方は、合理的配慮の提供を求める法制度にもつながっている。社会の側を変えることで誰もが暮らしやすくする発想は、障害のある人だけでなく、高齢者や子育て中の人にとっての暮らしやすさにもつながる。
地域共生社会への広がり
共生社会の理念は、障害者施策から始まり、より広く地域共生社会という形へと広がっている。地域共生社会は、高齢者、障害者、子ども、生活に困難を抱える人などを、対象ごとに縦割りで支えるのではなく、地域の住民や多様な主体がつながり、世代や分野を超えて支え合う社会をめざす考え方である。背景には、一つの世帯が介護と育児を同時に担うダブルケアや、複数の困難が重なって既存の制度の隙間に落ちてしまう人の存在など、従来の縦割りの制度では対応しきれない課題の広がりがある。こうした課題に応えるため、相談を分野で区切らずに受け止め、地域全体で支える体制づくりが進められている。共生社会の理念は、抽象的な理想にとどまらず、福祉の提供のあり方そのものを問い直す具体的な動きへと展開している。
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)