図上訓練とは、実際に屋外で身体を動かす代わりに、地図や被害想定の資料を用いて机上で災害対応を模擬し、参加者が状況判断や意思決定を訓練する手法をいう。
大規模災害の発生時に災害対策本部がどう動くかは、実動訓練だけでは確かめにくい。そこで使われるのが図上訓練である。参加者が地図や被害想定図を囲み、与えられた災害状況のもとで情報収集・状況判断・指示伝達・資源配分などを模擬的に行い、対応手順や計画の弱点を洗い出す。代表的な手法に、住民や職員が大きな地図に災害危険箇所や避難経路を書き込みながら地域の災害イメージを共有するDIG(Disaster Imagination Game、災害図上訓練)がある。状況付与に応じて参加者が随時判断するロールプレイング型や、対応の手順を時系列で検証するもの、あらかじめ筋書きを定めた進行型など複数の方式がある。少人数・短時間・低コストで繰り返し実施でき、実動訓練の前段として計画や役割分担を点検する位置づけで用いられることが多い。
実動訓練との違いと位置づけ
防災訓練は、実際に人や車両を動かす実動訓練と、机上で行う図上訓練に大別される。実動訓練は避難・救助・消火などの動作を体で確認できる反面、大人数の動員や会場の確保が要り頻繁には実施しにくい。これに対し図上訓練は会議室で地図と資料を用いて行うため、少人数・短時間・低コストで繰り返せ、災害対策本部の意思決定や情報処理、計画そのものの妥当性を検証するのに向く。両者は代替関係ではなく補完関係にあり、図上訓練で計画や役割分担の弱点を洗い出してから実動訓練で動作を確認する、という組み合わせで用いられる。職員の異動が多い自治体では、図上訓練を定期的に行うことで地域防災計画やマニュアルの実効性を維持する手段としても重視される。
DIGとロールプレイング型
図上訓練の代表例として広く普及しているのがDIG(Disaster Imagination Game、災害図上訓練)である。参加者が大きな白地図に、河川・崖・木造密集地などの災害危険箇所、避難所・病院・備蓄倉庫などの防災資源、避難経路を書き込みながら、地域にどんな災害リスクがあるかを参加者自身の手で可視化し共有する手法で、住民の防災意識を高める地域訓練として用いられる。これに対し、災害対策本部の運営を検証する場面では、進行役が時系列で状況を付与し、参加者が役割ごとに判断・対応するロールプレイング型の図上訓練が用いられる。付与される状況に応じて参加者が自ら判断するため、台本に沿って動く演習よりも実際の意思決定に近い負荷をかけられ、本部要員の判断力や情報共有の練度を高める効果がある。
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