要求水準書とは、PFIやDBO、性能発注型の業務委託などで、発注者が達成すべき性能・サービス水準を定め、その実現方法を受注者の創意工夫に委ねる発注図書である。
従来の仕様書は「どの材料をどう施工するか」を発注者が細かく指定するが、それでは民間の技術やノウハウを引き出せない。要求水準書は発想を逆転させ、発注者は「達成すべき結果(性能・サービス水準)」だけを示し、その達成方法は受注者の提案に委ねる。PFI事業や包括的民間委託、指定管理者の選定などで、性能発注を成立させる中核文書として用いられる。
この文書の出来がプロジェクトの成否を決める。要求水準があいまいだと、受注者は最低限のコストで通る水準しか満たさず、発注者が期待した質が得られない。逆に要求水準を細かく書きすぎると、結局は仕様発注に戻ってしまい、民間の創意工夫の余地が消える。発注者は、達成すべき水準を「明確かつ測定可能」に書き分ける力量を問われる。
要求水準書は契約期間の全体にわたり受注者の履行を測る物差しにもなる。事業期間が長期にわたるPFIなどでは、モニタリングの段階で実際のサービスが要求水準を満たしているかを確認し、未達なら是正やサービス対価の減額につなげる。要求水準書は発注時の図書であると同時に、運営段階の評価基準でもある。
仕様発注と性能発注の分かれ目
要求水準書を理解する鍵は、仕様発注と性能発注の対比にある。仕様発注では、発注者が設計図書・仕様書で材料・工法・寸法まで指定し、受注者はそのとおりに施工する責任を負う。これに対し性能発注では、発注者は要求水準書で「達成すべき性能」だけを示し、どう実現するかは受注者が決める。両者は同一案件でいずれか一方を選ぶ関係にあり、要求水準書は性能発注を選んだ場合に作る図書である。性能発注は民間の技術・経営ノウハウを引き出せる反面、結果責任が受注者に集中し、発注者には水準を測定可能に書く力と、達成度を検証するモニタリング体制が要る。
モニタリングと対価の減額
要求水準書はPFI事業などで運営段階の評価基準として機能する。事業者は自らの提供するサービスが要求水準を満たしているかをセルフモニタリングし、発注者もこれを定期的に確認する。要求水準を下回るサービスが確認された場合、発注者は是正勧告を行い、改善されなければサービス対価の減額(ペナルティ)を科す。この「要求水準―モニタリング―対価減額」の連動が、長期契約においても事業者に水準維持の動機づけを与える仕組みである。減額の基準やポイント制の運用方法もあらかじめ要求水準書や契約書に定めておき、後の紛争を防ぐ。
つながりのある用語
関連
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)