津波防災地域づくり法(津波防災地域づくりに関する法律)とは、津波による災害から地域を守るため、ハード対策とソフト対策を組み合わせて安全な地域づくりを進めることを目的とする法律である(平成23年法律第123号)。都道府県知事による津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域の指定と、市町村による推進計画の制度を中核とする。
防潮堤をどれだけ高くしても、想定を超える津波は越えてくる——東日本大震災の津波被害は、施設に頼る防御だけでは命を守りきれないことを示した。津波防災地域づくり法は、その反省から、防潮堤などのハード対策と、避難を前提とした土地利用規制・警戒避難体制というソフト対策を組み合わせて地域全体の安全度を高めることを狙う法律である。仕組みの中心は、都道府県知事が津波浸水想定を設定したうえで指定する津波災害警戒区域(イエローゾーン)と津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)で、区域内では避難確保のための情報提供や、特別警戒区域での一定の開発・建築の制限が課される。市町村は推進計画を作成し、避難施設の整備や避難経路の確保、ハザードマップによる周知を計画的に進める。施設整備に頼り切らず「逃げる」ことを前提に土地利用と避難体制を設計する点が、従来の海岸保全中心の津波対策と異なる発想である。
警戒区域の二段階指定と土地利用規制
津波防災地域づくり法の中核は、都道府県知事による津波災害警戒区域の指定である。知事はまず最大クラスの津波を想定した津波浸水想定を設定し、これを基礎に、津波が及ぶおそれがある区域を津波災害警戒区域(イエローゾーン)として指定する。区域内では、市町村による避難情報の提供や、要配慮者利用施設の避難確保計画の作成が必要となる。さらに、著しい被害が生じるおそれが高い区域は津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)として指定でき、ここでは病院・社会福祉施設・学校などの開発や建築に、安全な高さの確保といった制限がかかる。土地利用そのものを規制して被害を抑えるこの手法は、土砂災害防止法の警戒区域・特別警戒区域の枠組みと考え方が共通する。
推進計画とハード・ソフトの組み合わせ
市町村は、津波浸水想定を踏まえて津波防災地域づくりを総合的に進めるための推進計画を作成できる。推進計画には、海岸保全施設や避難施設(津波避難ビル・人工高台など)の整備、避難経路の確保、警戒避難体制の整備などを位置付け、ハード対策とソフト対策を一体で進める。法が重視するのは、防潮堤などの施設で防ぎきれない津波を前提に、避難で命を守る体制をあらかじめ計画に組み込むことである。津波避難施設の指定・整備に加え、ハザードマップによる住民周知や避難訓練と組み合わせることで、施設整備が間に合わない段階でも避難を機能させる狙いがある。東日本大震災後に整えられたこの枠組みは、南海トラフ地震など今後の巨大津波への備えの基礎となっている。
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