TKBとは、避難所の生活環境を評価する三つの要素であるトイレ(Toilet)・キッチン(Kitchen)・ベッド(Bed)の頭文字をとった標語であり、災害関連死を防ぐために早期に確保すべき最低限の生活基盤を示す概念である。
発災直後の避難所で、和式の仮設トイレ・冷たい握り飯・床への雑魚寝という三点セットがなぜ命に関わるのか。過去の災害では、これらが要因となって体調を崩し災害関連死へ至る例が繰り返された。TKBは、トイレ・温かい食事(キッチン)・簡易ベッドの三つを避難所運営の質を測る物差しとして示し、改善の優先順位を一目で共有できるようにした標語である。提唱者の医師がイタリアの避難所運営を引き合いに「発災後48時間以内の整備」を訴えたことから、TKB48とも呼ばれる。日本の避難所は床に雑魚寝・トイレが不潔・食事が冷たいという三重苦に陥りやすく、避難の長期化とともに健康被害が深刻化する。避難所運営の計画段階でTKBを指標に据えると、何を先に備蓄し何を真っ先に搬入すべきかの判断がぶれにくくなる。
三要素が災害関連死に直結する仕組み
トイレが不潔または不足すると、被災者は用を足す回数を減らそうと水分や食事を控え、脱水・膀胱炎・便秘を招く。冷たく炭水化物に偏った食事(キッチンの不備)は栄養の偏りと体力低下を生む。床への雑魚寝は、舞い上がるほこりの吸引による呼吸器感染、冷えによる血行不良、そして足を動かさないことによる深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)の温床になる。これらはいずれも単独でなく重なって持病を悪化させ、避難生活そのものが死因となる災害関連死に至る。三要素を一括りにする標語の意義は、どれか一つを整えても他が欠ければ健康は守れないという不可分性を運営者に意識させる点にある。
避難所運営計画への落とし込み
TKBを避難所運営に組み込む具体策として、トイレでは携帯トイレ・簡易トイレの備蓄に加え、下水道直結で繰り返し使えるマンホールトイレや、断水時にも機能するトイレトレーラーの確保が進む。キッチンでは、温かい食事を提供するキッチンカーや炊き出し体制、栄養士の関与による献立改善が論点になる。ベッドでは、床から約30センチ体を離して衛生と冷えを改善する段ボールベッドや簡易ベッドの導入が代表的である。スフィア基準が示す国際的な避難所の最低基準とも整合し、避難所の質を平時から計画に書き込み、必要数を逆算して備蓄・協定で手当てしておくことが運営の要となる。
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