棚田地域振興法とは、傾斜地に階段状に開かれた棚田の保全と棚田地域の振興を図ることを目的とする法律である(令和元年法律第42号)。都道府県の申請に基づき国が指定棚田地域を指定し、地域の振興活動を支援する枠組みを定める。
急斜面に石垣やあぜを積んで作られた棚田は、平場の田に比べて機械が入りにくく維持に手間と費用がかかるため、耕作放棄が進みやすい。だが棚田は食料生産にとどまらず、国土の保全や水源の涵養、景観の形成、伝統文化の継承といった働きを担っており、失われれば取り戻しにくい。本法はこうした多面的な機能を守るため、棚田地域を国の支援対象として明確に位置づけた。
仕組みは段階的で、まず都道府県の申請を受けて国が「指定棚田地域」を指定し、次にその地域で市区町村や農業者、NPOなどが「指定棚田地域振興活動計画」を作り国の認定を受ける。認定を受けると、中山間地域等直接支払や多面的機能支払などの関連施策を地域に重点的に振り向けやすくなる。議員立法による2019年成立の比較的新しい法律で、中山間地域の振興施策の一つとして自治体が活用する。
指定と活動計画認定の二段構え
本法の支援は二つの段階を踏む。第一段階として、都道府県が国に申請し、棚田の保全を図るため振興措置を講ずることが適当で、かつ振興活動が円滑・確実に実施されると見込まれる地域を、国が「指定棚田地域」として指定する。第二段階として、指定された地域で市区町村・農業者・地域住民・NPO等が「指定棚田地域振興活動計画」を作成し、国の認定を受ける。認定を受けた計画に対しては、中山間地域等直接支払交付金や多面的機能支払交付金、農山漁村振興に関する各種事業などを重点的・優先的に活用しやすくする措置が講じられる。棚田単体への新たな補助金を創設するというより、既存の中山間地域向け施策を棚田地域に束ねて差し向ける性格が強い。
議員立法と多面的機能の保全という理念
本法は2019年(令和元年)に議員立法で成立した比較的新しい法律で、棚田を「貴重な国民的財産」と位置づける。棚田地域が有する機能として、農産物の供給のほか、国土の保全、水源の涵養、生物多様性の確保その他の自然環境の保全、良好な景観の形成、伝統文化の継承を挙げ、これらを一体として守ることを目的に掲げる。背景には、棚田が条件不利地に集中し維持コストが高いため放棄が進みやすいという実情がある。自治体にとっては、中山間地域の集落維持や交流人口の呼び込み、農泊・着地型観光といった地域振興と組み合わせて活用できる施策の一つとなっている。
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